うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

日下諗「給仕の室」①

さて、早速ですが、初期白樺派・日下諗先生の「給仕の室」です。

もう、これを語りたいが為にこのブログを開設したようなものですので、早速語ります。

とりあえずどのような小説なのか、4コマで纏められそうでしたので4コマ漫画にしてみました。

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文字が多くてすみません。

とりあえず一言で言うと、SMとBL要素満載の色々ヤバい変態小説です。

氏家幹人先生の「武士道とエロス」という新書で紹介されていて、高校生の時に読んだのが全ての始まりでした。

(「武士道とエロス」では他にも色々BL要素ありの日本近現代文学が紹介されていますので、とてもオススメです。)

 

さて、「給仕の室」ですが、上の4コマに概要は描きましたが、あらすじを文章で書いてみます。最後まで書きますので、ネタバレありです。

 

舞台は明治時代のとある官庁で、ここに割と劣悪な環境の給仕室があります。

ここに勤める給仕で、17〜8歳の青年が主人公です。

彼の他に4人の同僚が居ますが、その中の1人に18歳の「鈍太」とあだ名された頭の弱い、鈍臭い青年が居ます。

鈍太はひ弱で色白で男らしくなく、またコミュ障で仕事も出来ない為、彼がどうにも気に入らない主人公は他の同僚と共にいじめます。

しかし、今までいじめていたかと思えば、ある時には急に可哀想になったり、また愛おしく感じて謝って優しくしたりと、DV男のような行動を繰り返します。

主人公は本心では鈍太をいじめたくないと思っているのに、鈍太のちょっとした言動で癇を刺激されてまたいじめてしまうと言うジレンマに陥り悩みます。

また、鈍太に対してBL的な感情も持っているようで、急にキスをしたり、当直で布団を並べた時に鈍太の布団に入って背中から抱きしめて「俺のことが好きか」としつこく問いただす始末。

一方の鈍太は、いじめられてもキスをされても抱きしめられても基本的にはされるがまま。

主人公に対してどのような感情を持っているのかは結局明かされません。それがまた「鈍太は苛められても何でも私が好きなのだと云ふ気でゐたい」主人公をヤキモキさせます。

そして、主人公の行動は段々エスカレートし、とうとう階段から突き落として怪我をさせるという傷害事件へと発展しますが、このことを全く反省しない主人公。割と冒頭からヤバかった主人公のヤバさに拍車がかかっています。

が、流石に本人もヤバいと思ったようで、その後は傷害事件に発展しそうな場面を避ける主人公の姿が書かれたりもしています。

しかし、その後にこの小説最大の、そして最後の事件が起こります。

鈍太と主人公が当直で一緒に風呂に入り、もう出たいと言う鈍太を無理矢理風呂に入れて抱きしめている内にのぼせさせ、気絶させてしまいます。

鈍太が死んだかと思って慌てる主人公。

他の当直の人の手も借りて介抱し、何とか鈍太は回復しましたが、主人公はこのまま自分の感情が進んでいったら本当に鈍太を殺してしまうのではないかと思い、「云ひ難い恐怖を感じ」物語は終了します。

という流れです。

もうあらすじだけでも主人公の言動が色々ヤバいですが、本編を読んでいただけたら主人公の鈍太に対する複雑な感情も鬼気迫る感じで伝わってきて本当にヤバいと思います。

未読で興味を持たれた方は是非!読んでみて下さい!

収録されている筑摩書房の「明治文学全集」は大抵の公共図書館に置いてあると思いますし、本編は短いのですぐ読めます。

私はこの小説を高校生の時に初めて読んで、その後「白樺」の復刻版で日下諗先生の小説を全て読むというところまでどハマりしました。(4コマに描いた「お島と猫」も鬼気迫る感じですごく良かったですが、それ以外の作品はあんまり印象に残っていません。)

そして初めて読んでから10年以上経った今も、この作品について語りたくてこんなブログを開設してしまうくらい、どハマりしています。

主人公と鈍太の関係性が何とも言えず、彼らのその後をひたすら妄想しています。

私も主人公以上にヤバい奴かもしれません。

とりあえず長くなったので一旦アップしますが、また別記事で「給仕の室」については語るつもりです。

「給仕の室」の登場人物について(「給仕の室」②) - うみなりブログ。