うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

川端康成「當用日記」① (「少年」⑤)

川端康成先生「少年」の記事、5回目です。

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川端康成「少年」時系列 - うみなりブログ。

「少年」に関連して、川端先生の「當用日記」を大正四年ころから読んでいますが、川端先生が色々赤裸々に書きまくっているのでとても面白いです。内容はまんま川端先生の中学生の時の日記です。

その中から「少年」に関連しそうな寄宿舎の第五室と室員の小笠原(登場人物の記事での②清野)・宮田(③垣内)・竹内(⑤杉山)に関する部分のみを抜き出してみました。

大正五年四月三日→5.4.3みたいに年月日は略しました。また、句読点はこちらで付け、旧漢字も現代のものに改めてあります。(「當」も現代では「当」ですが、一応作品タイトルのようなものにあたるので、こちらは旧漢字のままにしてあります。) 「※」は私が勝手に書いたものです。頑張って写しましたが誤字脱字等あると思います。

また関連する部分のみの抜き出しですので、現物には基本的にその前後にも記載があります。興味のある方は「川端康成全集 補巻一」(新潮社、1999年版)をご覧下さい。

若干の同性愛的記述があります。

5.4.3(月)

室員が知れて五室だと定つた。

5.4.5(水)

共同販売所に二円七十銭を払ひ寄宿舎に来ると同室の竹内も帰つてゐた。次で宮田小笠原も落第したのにかまはず来た。新しい生活が始まつた。幻影を永久に持したい。lunatic

5.4.6(木)

とにかく新しいといふ事は人の心を喜ばすのである。初めての室長はん生活であり室員も新しいので愉快である。この愉快が来年の四月まで続くかはどうか去年でも一月二月は愉快に暮したのだつたけど追々冷めて行つた。

5.4.8(土)

帰舎。大掃除後煤掃きする。五室は寄宿舎の別荘とまで云はれてゐる室で、寄宿舎にしては一寸自然のみえる場所である。

5.4.9(日)

午後論文を書き了へて新聞社を訪ね、必ず三部づつ送つてくれる様に三度目の依頼する。それから宮田が行かぬといふを残し、小笠原竹内と九條山に遊ぶ。キヤラメル夏蜜柑サイダを携へる。春の野の眺望を賞でて帰舎ると、又食堂に急ぐ人が廊下を行く時分だつた。

5.4.11(火)

室員が浅ましい愛の対象となり火照る。早くなど白い腕に眺め入りしみじみと寝顔をみつめる事もある。竹内は少々ガサ的で今迄友もなかつたことも點首かれるやうである。宮田は比較的無事で可成りの用もしてくれるし、膚理の美しいのは前から風呂場で嘆文していた。小笠原はこんな女を妻にしてもよからうと思ふ位柔和な本当に純な少年だ。宮田竹内は稍(※やや)もすると破裂しそうなけれども、小笠原ばかりは安全である。充分に愛擁し得る幼い心である。

5.4.15(土)

夜小笠原に戯れ話をする。俺は天神橋に落ちてたのだと云つた。祖父母父母兄弟姉妹が皆無いと云つた。

5.4.18(火)

そろそろ幻滅が頭を擡げる。宮田竹内皆変な奴だ。

5.4.19(水)

小笠原の恐怖病つたらない。何だか訳の分らぬ奴ばかりがゐる。

5.6.20(火)

石伏君など「姉の死」執筆の傍に来て小笠原のシース(※鉛筆や万年筆などを挿しておく鞘のことらしい)を探してゐると、極彩色の怪し気な鉛筆画が出た。一寸奇異な思がした。私は勿論春も来、目覚める時には目覚めるのだ。おさへるのは無意味な事だと思つて宮田の樟脳や美顔水の瓶もだまつてゐるけれど、小笠原は一寸あやしんだが別に大した事と思はなかつた。食後小笠原が泣いてゐる。何でもない事と思つた。無実の罪とか、別に考へるとか、何かたくらんでした事で、外にも仲を壊す様な事を考へてゐるらしく、しぶとかつたが何たる低級な感情だらうと唾したくなつた。一時間ほど誰やらになぐさめられて心晴れたらしい。私は冷然とほつといた。泣きたい程つまらぬ。

※何があったのか良く分からないのですが(春画みたいなものが出てきて清野少年が隠してるって疑われたとか?)、この頃には清野少年に冷たい川端先生。

5.6.21(水)

昨夜山口と云ふ杉本先生宅に下宿した少年が入舎した。私も眼の走つてゐる方なので私の室に来る事を望んだけれど四室となつた。室もまづまづよく行つてゐると云つてよからう。

5.6.22(木)

総ての物を性欲の憧動を持てのみ見る。室員の宮田にもおさへ難い。チラチラする美少年の白い肌や袴衣類運動服の画いてゐる曲線にもなやましい。

5.6.24(土)

宮田が腹立たしい。

5.6.29(木)

室に帰つて好奇の目を放つて皆の寝態をみる。宮田が三尺帯を褌にして転がつてゐる。何時も思ふ事だが狂的に抱擁してみたらどうなるか。何れ直ちに自由になり得べきものと期待するけれど、一寸した生理的欠かんが気がかりだ。

5.7.1(土)

宮田と三十銭の間食する。

5.7.2(日)

昨夜床に入つてから竹内の小便のこと。久しく秘密にしたのだけれど時が来たから。丑の時参り其他神秘な恐ろしい話に落ちてゆく。小笠原ビクビクする。神秘主義やら心霊学の端くれを話す。便所に行つて帰ると宮田白い衣に白い眼で立つ。小笠原キヤツと云つて俺の肩につかまる。今朝目覚めると宮田の丸い肉体がほんのり浮かんでゐる。立ち上がつて小笠原の寝てゐるのをこえて膝ついて瞶る(※じっと見る)。少し突つ伏す様にして脚を巻いてゐる。肛門より展開した曲線。何て白く何て美しくて何て生々してるのだらう。恍惚としてゐたが着物をかけてやる。名残惜しく再びはねのける。宮田が目覚めたので驚いてかぶせ布団をきせる。礼を云ふた。これで風が冷たかつたので尻を出してゐるのを親切気にやつた事になつた。それにしてもこんなものをむざむざ何もし得ない悔は否まれる事は定めしなからうに、俺は弱い耽溺のどん底の詩人など考へる。それから学校の紅野といふ美少年の事などに夜を明かす。此頃俺はどうしてこんなにはげしくなつたのだらう。

※登場人物の記事のところでも紹介しましたが、小笠原さん(②清野)が可愛すぎて思わず絵にしてしまいました。「川端先生と一緒にトイレに行って、帰ってきたところで驚かされた」という状況だと思うので、怖かったからトイレにも一人で行けなかったのかな、とか思ったら更に萌えました。

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この後の宮田(③垣内)に見惚れるシーンも重要だと思うので、この日の日記は全文写しました。

この時点では完全に宮田に虜にされてますよね…。宮田の寝姿に見惚れ、隣で寝ている小笠原をまたいで近くで見る→我にかえって着物を掛ける→やっぱりもうちょっと見たくなってまた剥ぐ→宮田が起きたので慌ててまた着物と布団を掛ける…って相当ですよ?つーか何やってるんですか、先生…。

長くなってきたので、この続きはまた別記事にします。

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