本日は堀辰雄先生のBL要素のある名作「燃ゆる頬」について感想を書こうと思います。
BL要素のある日本近現代文学では割と有名な作品で、今年に入って発売された「少年愛文学選」(平凡社ライブラリー)にも収録されていました。
著作権が切れているみたいなので、青空文庫で読むことができます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/55425_49028.html
私が旧字旧仮名が好きなので↑は旧字旧仮名バージョンですが、新字新仮名バージョンも別ページにありました。
以下、BL・同性愛的な内容が含まれます。
もう甘美!甘美で官能的な世界が繰り広げられており、読み終わった時には恍惚とします。
何て官能的な文章を書くの…堀辰雄先生…。
いや、主人公達は終始プラトニックで一切R指定的な行為はしていないのですが(作中ではキスや抱擁すらしないので川端×清野よりもプラトニックです。)、ものすごく雰囲気がエロいです。事あるごとにエロいです。エロいことを一切していないのにエロいって、一体どういうことなのですか…すごくないですか?
あらすじとしては、高等学校の学生である主人公が、同じ寄宿舎の三枝という一つ年上の皮膚の美しい同級生と友達以上の関係になりますが、一緒に旅行した際に主人公が初めて異性を意識してから2人の関係性にも変化が現れて…というものです。
「同性愛から異性愛への移行」をテーマにした作品です。
異性愛を知った後の主人公は三枝に対してものすごく冷たいので、三枝側の視点で読むと切なさが倍増です。三枝は主人公を変わらずに想っているので、手紙とか無視されて本当に可哀想だよ…。
とりあえずこの作品の見どころは、甘美で官能的な文章だと思います。
「これは何だい?」と訊いて見た。
「それかい……」彼は少し顏を赧らめながら云つた。「それは脊椎カリエスの痕なんだ」
「ちよつといぢらせない?」
さう云つて、私は彼を裸かにさせたまま、その背骨のへんな突起を、象牙でもいぢるやうに、何度も撫でて見た。彼は目をつぶりながら、なんだか擽つたさうにしてゐた。
個人的に一番エロいと感じたシーンです。
↑一番好きなのはこのシーンです。
あと、魚住という身体の大きい上級生に呼ばれて近くに寄った時とか、魚住が三枝の寝床を覗き込んでいる時とかが、アレな展開になりそうだけどならなくて、凄くドキドキしました。折口信夫先生「口ぶえ」もそうだし、加賀乙彦先生「帰らざる夏」もそうだし、上級生→下級生って何かドキドキしませんか?
ところで全く関係ありませんが、旅行先で少女に話しかけて主人公が笑われるシーンがあるのですが、萩尾望都先生「トーマの心臓」のこのシーンを思い出しました。(「トーマの心臓」も大好きです。)
「燃ゆる頬」も漫画になっているみたいですね。私は未読ですが、サンプルが良い感じでしたので機会があったら全部読んでみたいです。
↑良かったらクリックお願いします。