うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

折口信夫「口ぶえ」②

折口信夫先生のBLの要素ある小説「口ぶえ」の感想2回目です。未読の方は①からご覧下さい。

折口信夫「口ぶえ」① - うみなりブログ。

小説のネタバレありな上にBL・同性愛の話題です。お気をつけ下さい。

前回、主人公の漆間君に想いを寄せる上級生・岡沢君が漆間君に穢らわしい存在として思われてしまったところまで書きました。

今回はそれに対をなす清らかな存在が現れます。

後半に彗星の如く現れ漆間君と両想いになるクラスメイトの渥美泰造君です。渥美君は清らかな存在として描かれています。

渥美君…、何か登場が突然なんですよ。岡沢君にドギマギしている時には全く触れられずに後で急に名前が出てきて、実は漆間君が密かに好意を持っているクラスメイトである、みたいな感じで説明されるのですが、そんなクラスメイトが居るなら小説が始まった時に真っ先に名前を出しておいて欲しかった、と感じるくらい急展開です。

そして岡沢君を穢らわしいと思い始めた辺りで渥美君から手紙を受け取ります。同時に届いた岡沢君の手紙は、可哀想に笑い飛ばされてしまいます。渥美君からの手紙は要約すると「夏休み中で何処そこの寺に居るから漆間君にも来てもらいたい、いや、やっぱり来なくてもいい、いや、やっぱり来て欲しいのか…?自分でもよく分からなくなってきたから漆間君に任せるよ!」みたいな手紙なんで、漆間君は当然困惑します。が、結局渥美君の元へ向かうのでありました。

寺に到着した漆間君は、渥美君があんな手紙を寄越したとは思えない位いつも通りだったので騙されたと思ってガッカリしますが、とりあえず寺に泊まって渥美君と過ごすことになります。2人は特に想いを口に出したりはしませんが、完全に両想いです。多分お互いに清らかなものを求めていて、そうじゃない世の中に失望し、渥美君は死ぬことまで考えているようです。

「みんな大人の人が死なれん死なれんいいますけれど、わては死ぬくらいなことはなんでもないこっちゃ思います。死ぬことはどうもないけど、一人でええ、だれぞ知っててくれて、いつまでも可愛相やおもててくれとる人が一人でもあったら、今でもその人の前で死ぬ思いますがな、そやないとなんぼなんでも淋しいてな」

渥美君の名ゼリフ。漆間君は自分も一緒に死ぬ、と言いかけて言うことが出来ませんでした。

漆間君は「自分は親に嘘をついたりするような人間で清らかではないから、渥美君には相応しく無い」と思い込んでいます。そう思い悩めるのも清らかな証拠だよ!と教えてあげたい…。

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↑渥美君はエスパーなんじゃないかと思うくらい、漆間君の心を読んできます。ここも割と好きなシーンです。

穢らわしい世の中に絶望した2人はラストで山上の岩の上に立ち、一歩踏み出したところで「前編終」。

おーい!折口先生!ちょっと!この後漆間君と渥美君は一体どうなるのですか!!

後は読者の想像に任せるよ、みたいな終わり方も全然ありだと思うのですが、「前編終」とか書かれてしまうと逆に気になってしまうじゃないですか…。

いやーもう、若いね…。穢らわしい世の中に絶望して死ねるほどの純粋さが眩しすぎる…。

アラフォーになった今読むと、「漆間君は唯一の後継ぎなのに、死んじゃったら漆間家どうなっちゃうの」とか余計なことばかり気になって仕方がないよ…。

そんな私も漆間君に嘲笑される穢らわしい人間なのでしょう。

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