うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

石濱金作「変化する陳述」

川端康成先生関連で最近妙に気になっている、川端先生の親友の石濱金作先生。

彼もれっきとした小説家です。

ただ、現在普通に読める著作物はかなり少なそうです。

新青年傑作選「君らの魂を悪魔に売りつけよ」(角川文庫)に彼の短編が載っていることが分かり、地元図書館ではこの1冊しか石濱先生関連の本がありませんでしたのでとりあえず借りてきました。

わざわざ川端先生関連の記事に書かずに単独の記事に書いたことからもお察しいただけるかもしれませんが、何とBL要素がありました。

全く期せずして、です。

ということで石濱金作先生の短編小説「変化する陳述」について語りたいと思います。

以下、BL・同性愛要素があります。お気をつけ下さい。

もー本当に全く期せずして、ですよ?

ただ単に川端先生の親友がどんな小説を書いているのか興味本位で読んでみようと思っただけなんですよ?

こんなところにまでBL要素がやってくるなんて、BLの神様が微笑んだとしか思えません。

この「変化する陳述」がどのような小説かと申しますと、推理小説です。

以下ネタバレありのあらすじを書きますが、ネタバレ厳禁なジャンルかと思いますので、ネタバレが嫌な方はここで立ち去って下さい。

 

青木茂という不良青年がホテルの一室で殺害され、一緒にいた新劇女優の秋葉美子が逮捕されました。

青木は美子をホテルに連れ込み、玩具のピストルで脅迫したものの、美子に額を殴られて死亡という状況。

美子は取り調べに対し供述しますが、その供述がコロコロ変化します。

①玩具のピストルで脅されたので自衛の為に拳で額を殴ったら、突然青木は倒れて死んだ。

②ピストルは実は美子の物であった。

③脅迫はされたが襲い掛かっては来ていない。

④拳で額を打ったのは嘘である。

本当は局部を××されて殺害された。(××は本編にも書いていません。)

さて、青木が殺された本当の状況は一体どのようなものだったのでしょうか?

殺された青木と知人である作家の橋場仙吉も事件に絡んでくるのですが、

橋場仙吉は殺された青年、青木茂を知っている。いや、知っているなどというどころではなかった。彼は仙吉のペットであった。仙吉の愛物であった。仙吉は今年三十六歳になる、一人前のりっぱな作家であったが、いまだに妻を持たず、その代わり青年、茂を愛してきた。

ということで、ハイ、BL要素があります。

この文が割と冒頭にあったので二度見しました。

私は石濱先生と川端先生との関係にBLとかブロマンス要素を求めているのは間違いないのですが、石濱先生が書いた著作物にまでBL要素は求めていなかったのです。いや、有難い!有難いです!が、偶然にしてもちょっと怖い…!何か怖い…!

しかも、ペットって…!愛物って…!ヤベェもん引き当てちまったぜ!ヒャッホゥ!という気持ちで読みました。

さて、あらすじに戻ります。

今から推理小説なのにネタバレするという無粋なことを行いますよ?

やっぱりネタバレは嫌!という方はここで回れ右!

青木は橋場と以前から同性愛の関係でしたが、そのうちに美子と恋人となり、橋場にも一度紹介したこともありました。橋場は特に嫉妬もせずに、この若い仲睦まじい2人を祝福していました。と同時に美しい美子に少し惹かれもしました。

青木と美子の2人の関係を唯一知っていた橋場は参考人として警察に呼び出されます。

一方その頃、留置されている美子は錯乱し、大声で「葛巻先生」という人物の名前を叫び、「青木は自分を、いや、葛巻先生を脅迫した」という謎の供述をするに至ります。

警察は過去の事件から、美子の小学校の恩師である葛巻アヤ子が強姦されて殺害されたことを探し出します。

早くに両親を亡くした美子は、葛巻先生を実の親のように慕っていました。そんな先生が強姦されて殺害された…その事件は幼い美子の心に深い傷となって残りました。

そして男性不審になった美子は、世話になっている叔母が「男から襲われたら××を握りつぶせ」と平生から冗談混じりで言っているのを無意識に心に刻みつけながら成人しました。

青木と恋人になった後にもこの叔母の教えが無意識下に残っていて、事件の日に合意の上で性交渉に至る時に、葛巻先生が襲われるシーンが急に浮かんで来て思わずその手段で殺害してしまったというのが事件の真相でした。

コロコロ変わった陳述は、愛する人をそのような下品な方法で殺害してしまったことを恥じたことから咄嗟に出たものでした。

結局美子は無罪となり、身柄は橋場が引き受けることとなりました。

その後、橋場の家で、青木と葛巻先生の幻(亡霊?)と共に楽しく暮らす二人の姿がありました。

終。

えっと…。

メリバ…?(メリーバッドエンド=主人公にとってはハッピーエンドだが、読み手含めて他の人から見たらそうとは言えないエンド)

これが、メリバってやつですか…(;´д`)?

美子のコロコロ変わる供述のくだりはなかなか面白かったのですが、エピローグ含めて色々微妙な気持ちになりました…。

橋場と青木の同性愛エピソードもそこまで掘り下げてはおられず、BL文学的にも若干の物足りなさを感じました。

ちょっと酷評になりましたが、文章は読みやすいと思いますし、「!」が多用されていたり、勢いがあるのが戦前の大衆小説っぽくてなかなか好きです。

興味を惹かれた方は、是非読んでみて下さい。

新青年傑作選「君らの魂を悪魔に売りつけよ」(角川文庫)収録です。

[http://]

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