志賀直哉先生と里見弴先生の関係を語る最終回です。
前回未読の方は③からどうぞ↓
「君と私と」関連が完全未読の方は①からどうぞ↓
以下、若干のBL・同性愛要素があります。
①里見弴「君と私と」(筑摩書房「明治文学全集 76巻 初期白樺派文学集」)
②志賀直哉「廿代一面」(岩波書店「志賀直哉全集 第二巻」※1999年版)
③里見弴「善心悪心」(改造社「里見弴全集 第一巻」)
④里見弴「世界一」(同上)
⑤里見弴「ある年の初夏に」(同上)
⑥里見弴「幸福人」(同上)
⑦里見弴「春の水ぬるむが如くに」(岩波文庫「里見弴随筆集」)
⑧志賀直哉「正誤」(岩波書店「志賀直哉全集 第五巻」※1999年版)
を読んだ総まとめです。
これらを読んで一番思ったことを書きます。
志賀先生、里見先生のことが本当に大好きですよね…(*´∀`*)?
「君と私と」①②で里見→志賀と書いてましたが、もう容赦なく志賀×里見と書きます。志賀→里見の気持ちもものすごく強い上に、里見→志賀の気持ち以上のデカさのように思われて仕方ありません。志賀→→←里見くらい…?
まぁ大好きというのは同性愛的な意味合いとはちょっと違って人間性が好きとかそういう意味合いで書いていますけど、個人的には同性愛的な気持ちも若干は含まれていないだろうかと邪推します。
私が腐女子なのもありますが、そういう気持ちが若干でも含まれていなければあんなに里見先生に対して執着している理由が分からないのです。
里見先生を本当に小さい頃から知っているので、年長者として自分の思うようにしたい気持ちとか色んなものも混じっていそうで、とりあえず物凄く複雑そうな気はします。
一方の里見先生側はと言いますと
十二、三の時分、一時、私は慥に志賀君に惚れていた。
(岩波文庫「里見弴随筆集」収録「志賀君との交友記」より)
と自認した上で、
ところで、私の思慕が、ーー無論、プロポーズした覚えもないが、「哀しき片恋」に終ったことは、大へんな仕合せで、もしちょっとでもへんなことがあったりしたひには、とても私は、同じ文学に志したりなんぞしていられなかったに違いない。(同上)
と回想しておられます。二人の間には何にも無かったのです。えー…ちょっと残念…(オイ)。本当はほんのちょっとくらいはへんなことがあったりしたんじゃないですか…ねぇ(*´Д`*)⁈とか腐った呟きはこのくらいにしておきます。
以前書きましたが、二人はBL・同性愛未満の共依存的なブロマンスな関係だったんじゃないかと勝手に思っています。
実は自分は里見との関係に重すぎるイリュージョンを持ってゐた。自分の下らぬ方面もさうでない方面も全体的に見てゐてくれるのは里見だと考へてゐた。
(志賀直哉「正誤」より)
イ、イリュージョン…⁈マジックショーでしか聞いたことがない単語が飛び出してきましたよ!イリュージョンって一体具体的にどのような感情なんですか、志賀先生…!
このイリュージョンを持っていたが為に、「善心悪心」で自分のことが下らない方面にばかり描写されていたことに腹を立てて8年もの間絶縁したらしいのです。
なんかとりあえず里見先生にめちゃんこ甘えていたことだけは分かりました。
絶縁についてですが、今回読んだ①〜⑧の作品だけだと志賀先生が唐突に絶縁状を送って二人は絶縁したように読めてしまうのですが、史実では先に里見先生から志賀先生宛に「もう付き合わない、返事も要らない」という内容の手紙を送り、その一月後に「善心悪心」を読んで怒った志賀先生が「汝けがらはしき者よ」と絶縁状を送ったという経緯となっています。
たゞ「汝けがらはしき者よ」とだけ大書した友達の葉書を手にした時には、憎みと憤りとで蒼くなつた。
(里見弴「幸福人」より)
志賀先生の絶縁状は残念ながら残っていないらしいのですが、里見先生の手紙は「志賀直哉全集 別巻 志賀直哉宛書簡」(岩波書店)に掲載されています。なんかもう、断腸の思いで一生懸命書いたことが文面から伝わってきて胸に迫るものがあります。(Twitterで詳しく教えて下さったもこたろ雨様、本当に有り難うございました!)
また、志賀先生は
里見と私との関係は何度か不和にもなつたが、一種の腐れ縁で、何時(いつ)とはなく又親しくなつてゐる。里見は私にとつて、心の通ひ合ふ親しい友達で、共通の話題が多く、気楽に話せる点では特別な友達である。その為めか、私は里見と一番多く一緒に旅をしてゐる。
とも語ってはおられますので、腐れ縁なのは自覚があったようです。
共依存腐れ縁ブロマンス。最高です。
里見先生の文章がなかなか頭に入ってこないと以前に書きましたが、読み慣れたら少しずつ読めるようになってきました。読めば読むほど味のある文章です。そして随筆集はかなり読みやすかったです。
とりあえず④「世界一」の志賀先生と里見先生が可愛すぎて悶えました。
良い歳をした男二人が鳥取砂丘に大きな絵を描いて大はしゃぎしているというハートフルストーリーです。
この作中ではそれまでの共依存によるヒリヒリ感はなくてとても微笑ましいです。お手手まで繋いじゃってますよ!キャー(//∇//)!
「俺たちは、世界第一の仕事をしたんだぜ。人類始つて以來ないと云ふ大きな繪を描いたんだぜ!」
「さうだね、慥に世界一だね!」
(里見弴「世界一」より)
この会話が2人のテンションの高さを表していて好き過ぎる…。
是非色んな方に読んでもらいたい作品ですが、新しい筑摩書房の全集には収録されていないのが惜しいところです。
昭和6年発行の改造社の全集には載っていますので、図書館を駆使して借りられそうな方は是非そちらで読んでみて下さい。
上に書いた①〜⑥までの里見のターンはこの1冊で賄えますのでWでオススメです。
私はこの2人の複雑な関係をまだ完全に理解し切れていませんので、上手く文章に纏められなくてすっごく苦戦しましたが、ここまで読んでいただき有難うございました。
この君と私との関係は、BL的に見ても見なくても面白いので、ちょっとでも興味のある方は是非触れてみていただけたら嬉しいです。(里見先生の随筆集に入ってる「志賀君との交流記」は「君と私と」の最初の辺りのダイジェストみたいな感じで短いのでサラッと読むには良いかもしれません。面白かったら本編をどうぞ!ってな感じで…)
さぁ、簡単ではありますがこの2人の関係には一旦区切りが付いたと思いますので、今度は里見先生のお兄さんである有島生馬先生と志賀先生の関係についても色々読めそうだったら読んでいきたいな〜と思っています。とりあえず志賀→生馬な時期があったのは知っていますので、里見先生を入れて三角関係⁈なの⁈キャー(//∇//)!
↑こ、こんな感じになるのですか…⁈(※あくまで腐女子の逞しい想像です。)
これは絶対読まなならんやつだろう…!(※あくまで腐女子の逞しい想像です。)
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