うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

石濱金作「無常迅速ー青春修行記」①(川端康成と石濱金作②)

川端康成先生の一高時代からの親友である石濱金作先生が、川端先生との思い出を綴った手記です。

川端先生と石濱先生については県立図書館①でもちょっと語りましたので「川端康成と石濱金作」としては②になります。

未読の方はこちらからどうぞ。

県立図書館はパラダイス①(川端康成と石濱金作①) - うみなりブログ。

この作品はBL・同性愛の作品ではないのに、管理人の逞しい妄想力によって何故かBL・同性愛な話題になっていますので、以下お気をつけ下さい。

さて、この作品ですが、川端先生関連の参考文献としてよく見かけるタイトルで、雑誌の「文藝読物」昭和25年5月号に掲載されたということがわかっていました。

何かに転載されて一冊の本になっていないか探しましたが、見つからない…orz 本当に見当たらない…orz つーか石濱金作自体、全っ然検索に出てこねぇ…orz Wikipedia先生もペラッペラな内容ですし、写真すらまともに出てこないんですよ…。

諦めて国立国会図書館から遠隔複写サービスを利用して取り寄せることにしました。

遠隔複写サービスがあることを知ったばかりで一度取り寄せ依頼をしてみたくて堪らなかったので、ドキドキしながら初申し込みしてみました。

保存媒体がマイクロだったので単価が70円…。おおぅ。まぁ、必要経費ですので(?)。

さて、2週間ちょっとで届き、早速読んでみました。

一高に入る前に予備校で川端先生と出会った頃から主に若い頃の思い出が綴られています。

個人的にすごく読みやすく、内容も面白かったです。

これから川端先生と石濱先生の友情を履修しようと考える方には間違いなく必須の教科書ですが、繰り返しますが、何処にも再録されていません。

「文藝読物」昭和25年5月号に掲載されていますので、各自、国立国会図書館からコピーを取り寄せて下さい。

 

さて、内容に触れていきたいと思います。

川端先生は予備校に来ているのに全然勉強をしておらず、石濱先生からイヤな奴だと思われて一高にも落ちるだろうと思われていました。

そして一高に合格した後に、落ちると思っていたあのイヤな奴が教室に居たので、石濱先生はそいつの挙動が気になって気になって仕方ありません。

最初は気に食わない奴でしたが、そのうちに他の人が馬鹿にすると腹立たしく感じたり、彼の足音を聞き分けて判別するくらい動向に注視するようになりました。

川端先生がどのように風呂に入っていたかとかもつぶさに書いてありますので、相当観察しています。

因みにこの時点ではまだ仲良くないどころか、全然話したこともありません。何がそこまで石濱先生を駆り立てていたのでしょうか…。

 

中でも印象に残ったのが最初に教室に入った時のエピソードですが、川端先生がこれ見よがしに当時発売されたばかりの芥川龍之介羅生門」を机の上に置いていた→「新しいものに飛びつくミーハー」みたいに川端先生のことを思った、逆に石濱先生はその時夏目漱石「こころ」を持っていた→「今頃漱石を読んでいる奴がいる」と思われていた、というエピソードが文学者の出会いならではという感じで面白いです。

入学して一月程経ち、満を辞して(※話しかけたくて仕方なかった)運動会で話しかけたのをきっかけに急速に仲良くなります。

そしてここから二人の蜜月が始まります。

 

この辺りから、とりあえず石濱先生が恋する乙女です。

もう、恋する乙女以外の何者でもありません。

困惑するくらい恋する乙女です。

私が最近気になると言っていた『川端先生が「石濱が女だったら結婚したい」と言っていたらしい』ソースはこちらの手記でしたよ。万歳!

私達は互にもう離れられなくなつていた。(中略)

彼はその手紙の中の一つで、ある時私に向つて私がもし女であつたら、結婚して一生を共に暮らしたいと書いてきた。

らしくってよ、奥様!ヒューヒュー!

求婚(?)された後の展開から乙女パートに拍車がかかっています。

洲本にいると、東京とは違つて彼に近いので、私はくる日も/\彼に会いたくて仕方がない。私は砂の上に彼の名前を書き、それをじつと眺めて彼の目を見るような思いをした。白い砂の上で、青い海を眺めていると、私にはその向うに彼の顔が見えるような気がした。

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砂浜に名前を書いて、なんて今日び少女漫画でも見掛けないですよ⁈

そして川端先生が急に伊豆へ旅立ち、踊り子と出会ったこととかを書いた手紙を送ってきた時には

私は只、目の大きい、痩せて鶴のような彼が、何か旅先で病んでいるような、不安と焦燥とを感じて只一人旅先から来た彼の手紙を胸に抱いて、学校の図書館横の草原に寝転んで、彼に呼びかけたのだつた。

「早く帰つてこい。温泉宿の旅などは、まだもつと成長してからでよい。今は寮生活を楽しもう。早く帰つてこい」と。

手紙を胸に遠方に居る彼に呼びかけております。何かひと昔以上前の少女漫画のベタな展開みたいで、すごく良いですね!

すみません、完全に趣味で乙女のくだりに紙幅を費やし過ぎました。

②に続きます。

石濱金作「無常迅速ー青春修行記」②(川端康成と石濱金作③) - うみなりブログ。

 

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