川端康成先生の親友・石濱金作先生が川端先生との思い出を語る手記「無常迅速ー青春修行記」の感想の続きです。
今回も川端先生と石濱先生の関係にツッコミながら突っ込みます。
前回未読の方は①からご覧下さい。
石濱金作「無常迅速ー青春修行記」①(川端康成と石濱金作②) - うみなりブログ。
何故かBL・同性愛な話題になっていますので、お気をつけ下さい。
前回は石濱金作先生が川端康成先生に恋する乙女な場面で終了しました。
しかし、恐ろしいことにまだまだ乙女パートが続きます。
この手記は川端先生が生きている時に書かれているので(石濱先生は川端先生より早くに亡くなっていますので当然ですが)当然川端先生は読んだと思うのですが、この愛に溢れる文章を読んで一体どんな反応をしたのが本当に気になりますね…。
これを読む限りでは、本当に石濱先生は川端先生のことが好きで好きで好きなんだなぁと誰もが思いますよ。
石濱先生が32歳の時に出版された「新進傑作小説全集 第14巻 南部修太郎・石濱金作集」(平凡社)という作品集の月報に自己紹介があったのですが、
恋愛は一度もしたことがなくその点甚だ心淋しい。
と書いてありました。それって、川端先生と仲良くする(意味深)のに忙しくて女性と恋愛する暇なんてなかったんじゃ…とか邪推したくなります。
さて、「無常迅速」の話に戻ります。
川端先生の伊豆単独旅行の後、川端先生に友達が増えてくるにつれて嫉妬するような展開になります。
「川端と一番早く仲良くなって、一番理解しているのは俺なのに…!」という独占欲のようなものが感じられます。あああ〜もう〜!求婚までされたんですから独占欲が沸くのも当然ですよね(違)!
嫉妬して苦しいので、友人をやめてしまおうか、やめないまでも平凡なただの友達の一人に戻ろうか、とまで思い悩みます。
自分の友達が他の友達に取られてしまうような気持ちになり、何だか寂しいという何とも言えない感情を私も抱いたことがありますので、ちょっとわかります。
そして自分で自分のことを「放蕩な亭主の歸りを待つ女房」とか書いています。ハイ、これで、石濱が右なことが確定ですね!いや個人的には石濱が左でも全然構わないのですけどね!川端先生は相手が女だったら…とか言ってる辺り自分では左だと思っておられるようですが、私は右の素質も充分あると思います(知らんがな…)!清野少年からも攻められると良いと思います(なんて最低な段落なんだ…)!
そして、嫉妬に狂ってカフェ(詳しくは分からないのですが、今のカフェとは違って、酒類が提供されて女性と話せるような場所だったみたいです。今でいうキャバクラみたいなところって認識で良いんですかね…?)で一人乱れたあと帰舎し、色っぽい歌を川端先生の隣の布団で歌ったりします。隣の布団から石濱先生をじっと見つめる川端先生。
この後二人に一体何があったのか、腐敗がかなり進行している脳内で勝手に妄想が捗りますが、残念ながら何も書いてありません。腕ぐらいは弄んでいるかもしれない…(*´-`)
そんなことがあった後に「堅物な奴だと思ってたけど、一人でカフェ行くなんて、こいつも結構話せる奴じゃん!」と皆に認められ、川端先生や他の友人とも一緒にカフェに出入りするようになった模様です。
そして、そうこうしているうちに、川端先生が運命のあの女に出会ってしまう訳です…。
伊藤初代。
川端先生と婚約したのに、一方的に婚約破棄してくる女です。
この作中では千代子と書かれています。
この伊藤初代騒動について親友目線から描かれているので、真面目に川端先生を読んでいる人からしてもこの「無常迅速」はなかなか興味深い作品ではないかと、不真面目に川端先生を見つめている私はそう思います。
伊藤初代に見事に振り回されている様子が事細かに書かれています。
初代さん、今でいうメンヘラ…?
もう会わないとか自分から言っておいて悪びれずに川端先生の前に姿を見せたり、見つかるのとか全く気にせずに街中をうろついたり、ここに書かれている印象だと結構なメンヘラ構ってちゃんなんですけど…(;´д`)
「こんなメンヘラと結婚しなくて本当に良かったよ!結婚してたら本当に大変だったと思う!破局して良かった良かった!」という、婚約者に逃げられた若者に親戚の人がかけるような言葉が自然と頭に浮かんできます。
実際に、この初代騒動のショックをバネに「伊豆の踊子」(の元になった「湯ヶ島での思ひ出」)という名作を生み出していますので、破局しなければ文豪と呼ばれる川端先生は生まれなかったのかもしれません。
ここからは腐女子目線で気になったエピソードを抜き出していきたいと思います。
○初代騒動の後には、横光利一先生にまつわるエピソードが挟まります。
…挟まるんですが、私は横光先生そっちのけで川端×石濱が気になって仕方なかったですよ…!
横光先生と知り合ったばかりの大正11年頃、川端先生と石濱先生は道を挟んで向いの下宿に住んでいたらしいのですが、
二人は大抵、朝起きるとから夜寝るまで一緒にいたが、先づ最初はどちらかが湯に誘いにゆく。私がゆかないと、彼が呼びに来て、私の下宿の外から、「おーい」と、呼ぶ。
_人人人人人人人人人人人人_
> も う 一 緒 に 住 め よ <
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普っ通〜に「朝起きると夜寝るまで一緒にいた」とか書いてあるんですけど…!きっとアレでしょ…⁈ 後述する「バカに幅の広い優に四人は寝られる位の掛蒲団」で、どうせ自分の下宿には帰らずにしょっちゅう一緒に寝てたんでしょ…⁈
そして、川端先生に「おーい」と呼ばれるのは自分含めて3人(川端夫人、横光利一、自分)しかいないとか書いているんですが、さりげなく自慢してないですか…?とちょっとニヤニヤします。
○
彼は、二十八歳まで童貞であつた。
以前に24歳まで童貞だったことは川端日記から探し出して「少年」の記事に書いた後ネットで全世界に晒したのですが、(こちら→川端×清野はR18な関係になりえたか?① - うみなりブログ。)川端先生はそこからも更に徳を積まれていたのですね。感慨深いです。
それ程に、彼は自分の童貞を恥じ、また秘めていたのである。
秘めていたのにも関わらず当然のように石濱先生が把握していて、雑誌で全人類に晒しているところがとても良いです。
○話がちょっと前後しますが、
少年は好きだつたが、彼等はやがて大人になる。それに、少年を愛しているところを人に見られると、如何にもそれが彼自身の幼少時代の物慾しさを察せられるようで、いやである。そこえくると少女には結婚という手がある。結婚して了えば、自分のものである。
という記述も。
ですよね…!「少年」にめっちゃ色んな少年に惹かれる記述があるので(ややこしい)知っていましたけれども…!
友人にも把握されてこのように思い出の手記に記載されるレベルだったんですね。
男女問わず純粋無垢な人が好きということなんでしょうね。ああ、純粋無垢な筆頭=清野少年ーーー( ;∀;)!
○
彼が大事に持っているのは、(中略)バカに幅の広い優に四人は寝られる位の掛蒲団である。私も下宿で、よくその蒲団に入って寝た。彼と朝まで話をして、それから二人でその蒲団に入って寝るのである。
終盤にこんなことがさりげなく書いてあるんですけど、ちょっとちょっと…!何のアピールですか!
あんまりアピールが過ぎると腐女子が妄想に来ますよ!つーかもう来てますよ!(ここに)
布団とかいうワードを出されると、例により腐敗がかなり進行した脳内で勝手に妄想が捗ります。昔を懐かしんで腕ぐらいは弄んでいるかもしれない…(*´-`)
腐女子目線で見てきたので、大変に大変な内容な手記のように感じられたかもしれませんが、私が偏った取り上げ方をしているだけなので、誤解されませぬように。
ちゃんと川端康成と川端文学を古残ファンとして分析されています。
(※川端の作品は)青春時代から一貫した、孤独と神経に生きる作品である。そして、その上に、かすかな人生への愛着を見せている。それは冷たいようで暖かであり、また暖いようで冷たくもある。一種捨鉢な哀愁を漂わせている。最近には、その上に少し鬼気のようなものが加わった。
という訳で、非常に川端先生に対する愛に溢れる手記でした。大満足です。
気になった方は是非「文藝読物」昭和25年5月号のコピーを国立国会図書館から取り寄せてみて下さい。
さて、「無常迅速」からは以上になりますが、次回は川端日記から、川端先生が石濱先生をどのように思っていたかが分かる記述を抜き出して二人の関係をまとめていきたいと思います。
宜しければ、引き続きお付き合い下さい。
川端康成「當用日記」⑤(川端康成と石濱金作④) - うみなりブログ。
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