今回は検閲による削字だらけのBL文学、室生犀星先生の短編小説「稚児と妹」の感想です。
外では大人しい美少年が、家で主人公と妹にだけ見せる全く別の顔。
一言で書くとこんなストーリーです。
BL・同性愛の話題あります。以下お気をつけ下さい。
まず、最初に謝ります。
すみません…!
これも国立国会図書館案件ですーーーorz
私のリサーチ不足なのかもしれませんが、全然再録されている本が見つからないんです…。(噂によると室生犀星先生はものすごく全集未収録作品が多いそうなので、本当に無いかもしれません…。)
気になる方は各自国立国会図書館から複写を取り寄せて下さいーーorz(土下座)
「国粋」大正9年11月
に載ってますーー!!
あと、取り寄せていただいても本文びっくりするほど削字だらけですので、先に謝っておきます…( ;∀;)
↑こんなんです。不自然なスペースは全て削字によるものです。
私も削字のない完全版を探しておりますので、もし何かご存知の方がいらっしゃいましたら、是非是非是非是非何卒情報をいただけますよう、心よりお願い申し上げます…!!
さて、「稚児と妹」のあらすじと感想です。
主人公の幼なじみ・美少年の竹村は周りから稚児扱いされる事を嫌がっていました。
そんな竹村は家では妹の"かねを"を手酷く苛めますが、妹は苛められてもケロリとして竹村に懐いています。
主人公は、そんな兄妹の関係を不思議に思いながらも二人に惹かれています。
やがて主人公も上級生から稚児になるように迫られ、竹村の気持ちを知ることになる、というストーリーです。
さて、いきなりタイトルに堂々とありますね。
「稚児」。
近代BL文学を嗜まれている方々には基本中の基本の単語ですが、BL文学での「稚児」とは同性愛関係で受け身にされる少年のことです。
ふしぎなとは、美少年はたいがい血色の方からいふと、蒼白い皮膚の弱い肺病いのやうなところがあり、また事実に於て奇妙なことは、有名な稚児さんは十六七までには、決つて肺病になることであつた。
そうなの⁈
決つて肺病になるの⁈
私と一緒に清野少年とBL文学をはてなブログで推して下さっている、はおり様のブログ「気ままにBL鑑賞」(面白いので超オススメです。)でも
しかし、肺結核の有病率は寡占状態と言っていいでしょう。
(中略)
多すぎるので例は挙げませんが、旧制中学BLで有名なものは三冊中二冊は肺結核に冒されているはずです。
と書かれていましたので、美少年=肺病は割とデフォルトかと思っていましたが、はおり様、室生犀星先生が決つて肺病になると断言して下さいましたよ!(私信)
稚児さんになる美少年の特徴を説明した後、主要メンバーの竹村が登場します。
私の住んだ裏町に、竹村といふかなり評判な美少年がゐて、かれは二人ばかりのぬしに保護されてゐた。なりも高く色の白い、すらりと細身で紺絣の筒袖で、小学校に通つてゐる姿は誰が見ても、品のある優しさに充ちてゐてよく人目についた。
竹村の美少年ぶりが書かれた後、竹村が上級生に言い寄られているシーンになります。
竹村は上級生からの誘いを黙り込んでスルーするという手段をいつも使っているそうですが、今回もそれでスルーしようとします。
そして上級生は竹村に何かを言いますが、削字のせいで何を言っているのか肝心な所が分からねぇ…( ;∀;)
ぢゃ、いゝから覚えてゐたまへ。
とか言いながら去る上級生。
もう捨て台詞までもが、昔情緒あふれていて堪らんですたい。
竹村は幼なじみの主人公とだけは良く遊んでいるので、主人公はそれに少し優越感を感じているのでした。
ほのかに竹村に惹かれている様子がとても良い感じです。
竹村も主人公のことは特別に思っているようで
ちやうど人々に隠れた情人のやうに、何人も知らないうちに、強い友愛を両方に感じ合つてゐるのであつた。
という間柄であります。こんな風な書かれ方をされると勝手に邪推したくなるのが腐女子の悪い癖ですが、あくまで二人は友達です。
主人公だけは自分を稚児扱いしてこないので、それで信頼しているような部分も多そうです。
主人公は竹村の家にも行ったりしていますが、家には「浅ぐろい歯痒いほどかつちりした」「変な子」の"かねを"という13歳の妹が居て、よく3人で遊びます。
しかし、竹村は妹に「机を散らかしただろう」などと言いがかりをつけ、妹が「やっていない」と言っても「嘘つけ!」と何度も引っ叩くなど、妹を手酷く苛めます。
「何でそんな酷いことするの∑(゚Д゚)」と慌てて竹村を止める主人公。しかし手酷い仕打ちを受けた妹は仕返しに兄を引っ掻き「もっと引っ掻いてやれば良かったわ!」などと宣うなど、主人公からもお転婆扱いされています。
そして30分〜1時間も経てば、妹は先程の喧嘩のことなどすっかり忘れたように「兄さん兄さん」と懐いているという、兄弟のない主人公からすると余計に二人は不思議な関係に見えます。
主人公が竹村にも妹にも惹かれている気持ちが、所々の細かい描写に表れているのが印象的です。
竹村は白いこれも女らしい手の腹に、ぽつちりと滲んだ鮮やかな紅いのをちゆと唇で吸つた。なんだか私はそれが吸いたかつたやうな気がして、ふくれた手の腹を見つめた。
そして妹ちゃんはまだ13歳なのに、惹かれている主人公の目線のせいか所々で妙に艶かしいです。
かねをは顔ぢうを涙でべつとりと濡らして、それが乾いたところだけ糊のやうにぴんと張つた美しい肉色に輝いた顔をおづ/\上げるかと思ふと、(中略) 目がいき/\光つていつもより美しく私にはながめられた。
美しい竹村と、艶かしく見える妹。
苛めのシーンも、なんというか、竹村と妹の近親相姦的な匂いまでしてきて、とっても怪しいです。
家での兄妹のやり取り、これ、もしかして何かのプレイなんじゃないでしょうか…。
主人公は手酷い苛めがあっても良好な二人の関係を不思議には思っているもののただの仲良い兄妹だと思っていますので、
それほど竹村は妹をいぢめ抜いてゐたが、仲も非常によかつた。
兄妹の謎のプレイに巻き込まれながらも全く気が付いていないという、非常におめでたい構図が出来上がっています。
また、竹村は妹以外には主人公にしかこのような様子を見せておらず、また、ヒートアップして妹を手酷く苛めた後に一気に冷めて落ち込む様子なども主人公には見せています。
もしかして本当は妹を苛めたくないのかな?
誰かに止めて欲しいのかな?
でも親には見せられない…。
だから、あえて主人公の居る前で妹を苛めているのかな?
主人公はかなり竹村から信頼されて、何なら精神的にも甘えられているんじゃないかということが分かります。
主人公×竹村(*´∀`*)イイネ!
長くなりそうなので、②に続きます。
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