うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

里見弴「小説二十五歳まで」①

里見弴先生の自伝風小説「小説二十五歳まで」の感想です。

BL・同性愛要素あります。以下お気をつけ下さい。

里見弴先生については「君と私と」関連の作品について4回に渡って語り済みです。

未読の方は是非こちらからお読みください。

里見弴「君と私と」①(相関図付き) - うみなりブログ。

今回読んだこちらの「小説二十五歳まで」は、「君と私と」より前に書かれた自伝風小説らしいです。

↑こちらの「雑記帖ー里見弴未発表原稿集」(かまくら春秋社、1985年)に収録されています。

君=坂本=志賀直哉先生との関係に重点を置いて書かれてた「君と私と」に比べて、こちらはより「自伝」という感じがしました。

「君と私と」よりもずっと前の思い出から、色々なエピソードがちょっとずつ繋げられているような感じで書かれています。志賀先生は「君と私と」と被っているシーンにちょっとだけしか登場しません。

「君と私と」には直接的な BL要素があまり書かれていない為、BL要素に期待して読むとガッカリする方が居るかもしれません。(直接的な BL要素は薄めですが、志賀先生との関係が色々すっごいので、一読の価値はあります。)

BL要素が欲しい方は、こちらの「小説二十五歳から」の「ニ」の後半からご覧いただいたら割とご期待に添えるのではないかと思います。

 

里見先生が学生時代を過ごしていた明治後期頃は学生間での同性愛が流行っていた時期でもありますので、自然とその辺りの話題も度々登場する訳です。

 

ということで、こんなブログなんで潔く色々すっとばしまして(すみません…)、BL要素のみに着目しながら内容を見ていきたいと思います。

 

里見先生の思い出がかなり幼い頃から綴られていますが、男色という文字が初めて出てくるのは小学生の頃です。

 

猖獗な男色の流行が私たちの級まで冒して来た。私はまたこのために苦しめられることになつた。Kーと云ふ同級のあばれ者に私は見込まれた。この少年のは云ひ寄ると云ふやうなしほらしいのではなく、まるで強迫するやうだつた。(中略)

男色は、私にとつては、誘惑ではなくて、迫害だつた。たうとう我張りとほして、その後中等科に移るまでは、人も私には何んとか云はなくなつた。

(p41〜42)

 

この時点で里見先生は小学生なんですよ。

小学校にまで浸食していたなんて、当時本当に男色が流行っていたと云うのがわかります。

男色に興味が無い人にとっては迷惑極まりなかったでしょうね…。

 

私が手淫の方法を覚えたのも亦この時分か、或はもつと以前かも知れない。(中略)

その時の私にとつて、それは何らの快感でもなく、尚更悪いことを犯すと云ふ、少年にとつての一種の満足をも齎(もたら)さなかった。

(p53)

 

手淫のことが出てきたので一応書き写しました。

 

ここからは中等科になってからの話。

泊まり掛けの春の遠足で。

 

どうかすると、私の床へ這入つてくるものがあつた。私は当らずさはらずのことを云つて追ひ返した。(中略)

私は、口では色々馬鹿なことも云つて居たが、実際には、私はまだヴアジンであつた。

(p65〜66)

 

布団に入って来られちゃってる!!でもちゃんと撃退してる!!ヴアジンという書き方がなんか生々しいです。「まだ」ってことはいずれそのうち…⁈

里見先生の書き方って、何かこういう細かいところがたまにめっちゃ気になります…。深読みが捗ると言うか何というか…。

 

続いて、中等科で友達の高山と武林の三人で旅行した思い出。

 

武林は同級でも変つた少年だつた。(中略)

この少年が高山を恋して居た心持は、真に誠実なものであつた。(中略)

鎌倉の別荘に居るうちも雨が多かつた。晴れまを見て、海岸など歩く時、よく私は武林に高山のことを云つて娗(からか)つた。そのくせ夜寝る時には、私は二人の間で寝た。「聖人」であつた私は、決して男色の肉交を、自分にも人にも許さなかつた。

(p87〜88)

 

思春期によくある潔癖な感じの里見先生が何だか可愛いですね。

高山くん(「君と私と」の人名と同一人物と見て良いなら中村貫之氏)と武林くんはその後どうなったんでしょうか。

誠実な奴なら試しに付き合ってみても良いんじゃないかとかちょっと思っちゃいました。 

 

引き続き中等科の思い出。

泊まり掛けの遊泳で日射病になり寝込んでしまう里見先生。

ここからが、この小説の中で体感的に一ニを争うBL展開でしたので、ちょっと長く引用します。

 

そのなかで、親切に世話をしてくれる友達が二人居た。一人は同級でも余り口を利いたこともない大人しいHーで、他の一人は、私もその少年も機械体操が上手だつたところから、どつちかと云へば親しく遊んで居た、中谷だつた。この中谷は一ニ年前、Fーと云ふ同級生に頼まれたと云つて、その少年の恋を私の所へ伝へに来た。丁度私は病気で学校を休み、自家(うち)でも床に就いて居た。その時、中谷はFーのことを云つて了つてから、床の上に投げ出して居る私の手を握つたりした。私は二人の恋を一度に断つて、少なからず「聖人」の心を満足させて居た。(中略)

或晩、枕を並べて居る友達も寝静まつた頃、私の床のなかに中谷が這入つて来た。(中略)

汗ばむだ私の体をしつくり抱いて、耳もとにぼそ/\と囁く中谷の声を聞いて居ると、その言葉の内容を他にして、昏惑した。うづくやうな快感が私の身を浸した。私は接吻を許した。更に或る方法で、その友達の欲情を満すことを許した。鶏姦ではない。

(p88〜89)

 

(*´Д`*)

 

いや、もう!もうね⁈

中谷くんが積極的過ぎて…!何だかんだで応じてしまった里見先生と言い、こう云うエピソードが大好物なんでめっちゃドキドキしながら読みましたよ…!

中谷くんは何を囁いたんだろう…!

或る方法ってどんな方法なんだろう…!

このあとすぐ章が変わっているのでこれ以上詳しくは書かれていません。でも妄想の余地がものすごくあるのでブログを書きながらこんな顔(→(*´Д`*))してますよ(*´Д`*)

あぁ、きっとあんな風や、こんな風にしたに違いないんだぜ…!(*´Д`*)(※脳内が大変なことになっています。)

里見先生、なんか志賀先生との関係も含めて腐女子の心を鷲掴みにするのに長けていないですか。

 

ちょっと長くなりそうなので②に続きます。

 

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