うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

福島次郎「バスタオル」

福島次郎先生のガッツリ濃厚なBL小説「バスタオル」の感想です。

ガッツリBL・同性愛の話題なので、苦手な方はお気をつけ下さい。

 

 

超エモーーーーい!!

切なーーーい!!😭

体感的には「鮎と蜉蝣の時」とおんなじレベルの切なさです。

岩村蓬「鮎と蜉蝣の時」 - うみなりブログ。

こちらの「バスタオル」は、私と一緒に清野少年とBL文学をはてなブログで推して下さっている、はおり様のブログ「気ままにBL鑑賞」で紹介されていました。

はおり様の紹介が本当に秀逸で、めちゃくちゃ気になり読みました。

(リンクを貼ろうと思ったら、なんとブログが非公開に…😭

更新を毎回めっちゃ楽しみにしてたのに…😭

はおり様ーー😭!帰ってきてくれるのを楽しみにお待ちしていますーー😭😭!)

 

川端康成先生の「少年」の教師と生徒バージョン、みたいな感じで紹介されていました。

それは絶対読まなあかんやつだろう…!

川端康成「少年」① - うみなりブログ。

 

表題は「蝶のかたみ」ですので、探す時にはお気をつけ下さい。

Amazonはプレミア価格になってしまっていますが、割と図書館にあるかもしれませんので、気になる方は探してみて下さい。

ちなみに「蝶のかたみ」は、ゲイであることをひた隠しにしてきた兄と、ゲイで女装癖を商売にしてきた弟の話でした。

 

さて、「バスタオル」です。

もう、もう、あらすじは知っているのに二人がどうなるか気になって気になって一気読みしました。

そして泣きました。

このブログを書き始めてから出会った小説の中で一番のヒットかもしれません。(「少年」と「給仕の室」は大昔に出会っているので別枠です。)

ガッツリ肉体関係の描写もある濃厚なBL文学なので、18歳未満の方は閲覧注意です。

 

簡単に書きますと、高校教師と男子高生のラブストーリーです。

 

以下、ネタバレありのあらすじ&感想です。

舞台は1950〜60年代の熊本県八代市

主人公である高校教師の兵藤はゲイであることを隠して生きてきました。

赴任して3年経った頃に墨田という貧しい家庭の生徒と出会います。墨田は夜遅くまでアルバイトをして生活費を稼いでいます。

兵藤も貧しい家庭出身で今現在も実家に仕送りをしており、住んでいる場所もたった3畳の部屋で家主に問題がある格安の下宿です。

全体的に貧しい雰囲気が戦後の日本を思わせますが、学校生活の描写は自分が高校生だった平成とあまり変わらないような印象です。

ある寒い晩、アルバイトに向かう墨田に出会った兵藤は、深夜に寒い中1時間以上掛けて帰宅する話を聞いて、近くの自分の下宿に泊まりに来るよう誘います。

兵藤はゲイですが、この時点では墨田に対する好意も下心も全くゼロ。本当に不憫に思ってそのように誘います。

その晩本当に泊まりに来た墨田は、以降度々泊まりに来ることに。

そして何度も泊まりに来たある日、墨田の寝顔に見惚れた兵藤は思わずキスをしてしまいます。

兵藤は我に返り反省しますが、キスされたことに気付いていたのかいないのか、墨田は変わらず泊まりに来ます。

そして、また兵藤は墨田にキスをしてしまい、墨田はそれに応じます。(もう、もう、ここの描写がとりあえず最高です。)

そしてその後二人の関係は、最終的には肉体関係(※素○までですが)にまでエスカレートします。

 

墨田は基本的にニコニコ笑っていて、たまに拗ねたり、勢い余って学校でも兵藤に抱きついたりと高校生らしい幼さが書かれていて超絶可愛いのですが、家の手伝いや空手をやっていて筋肉質だったり、兵藤より背が高い描写がきちんとなされています。

兵藤も基本クールぶっているくせに、嫉妬したり、墨田の前で泣いたり。

墨田のちょっとした態度が気になって気になって仕方ない兵藤が、緊張しながら「今夜……き、きみ……」と乙女チックさ満点で墨田を泊まりに来るように誘うシーンとかあって、なんだかめちゃくちゃ可愛いんですけど…!!(*´Д`*)

つまり可愛い攻×可愛い受です。

 

墨田が女生徒と話している所を見て兵藤が嫉妬したり、逆に兵藤が女性教師と話しているのを墨田が嫉妬したり。身体だけでなく心も結ばれていく二人。

 

感情のいき違いやもつれがあっても、結局二人はその狭い三畳間の汚れた一つの蒲団の中で抱き合うことになる。唇を吸い合い、激しい喘ぎを忍びもらしながら、精を湧出させ、男女間のように納まるものも納められずにみだりにこぼし、バスタオルで始末してーー。(p.172)

 

一年以上そのような関係が続き、高校三年生の墨田はもうすぐ卒業し就職する予定ですが、なかなか就職先も決まらず、兵藤の下宿が変わっても相変わらずしょっちゅう泊まりに来ていました。

兵藤は嬉しい反面、墨田が来ると必ず見栄を張ってつい食事を奢ってしまいます。それは実家へも仕送りをしている兵藤にとっては痛い出費でした。

そして「卒業後もこのような関係をずっと続けることは出来ないので、このままフェードアウトするのが良い」と自分を納得させながら、学校の行事の為に帰宅が遅くなることにかこつけて墨田を避けるようになりました。

二人はあまり会わなくなってしまったまま、ついに墨田が卒業します。墨田の進路は決まりませんが、とりあえず職を紹介して貰えるかもしれないということで福岡に住む姉のところに行くことになりました。

兵藤の下宿に置き手紙を置いてそれだけで別れを告げようとした墨田。兵藤はその置き手紙に書かれた「御恩は忘れません。」という言葉を見て憤慨します。

 

御恩!御恩?僕は恩師なんかじゃない!墨田にとって愛人だったんだ、そう叫びたかった。(p.185)

 

そして、合鍵をそっと持ち帰ろうとした墨田の気持ちも知らずに、鍵を返すように言います。淋しそうな目をしながら鍵を返す墨田には気付きません。

数日後、他の同級生たちと共に駅から出発する墨田を、兵藤はそっと見送りに来ました。

しかし、墨田は兵藤を一瞥しただけ。

特に言葉を交わさないまま、墨田は旅立っていきました。

兵藤はしばらく心にポッカリ穴が空いたような状態で過ごしますが、ある夜に突然電車に乗り、墨田の家まで向かいます。

そして驚く墨田と再会。

墨田も墨田で、兵藤が自分を避けていると思い、あのような卒業時の別れになったとのことでした。

二人は二人きりの旅行へと出掛けます。

 

この旅行のくだりが…😭

「もう二度と行くことはない。もし次に行けても元の二人ではない。」とも分かっているのに、次の旅行の計画を立てたり…😭

二人の健気さが悲しい…😭

 

川端先生の「少年」度はこの旅行の部分でMAXになります。

 

自分そのもの、自分が醜く恥しいものとしてきた兵藤を包容してくれるもの。自分のすべてを許してくれるものの中で、性を流す瞬間、男はみどり児になるのだ。

 あまりに逸脱していることはわかっている。わかってはいても、一年余りの月日の繰り返しが、もう兵藤を見えぬ縄でびっしりと縛り上げている。明日から、墨田がそばにいなくなることは、突然、母の乳房を奪われる乳のみ児になることだった。(p.209)

 

「自分のすべてを許してくれるもの」って、もう、まんま清野少年なんですが…😭

まぁ川端×清野は性交渉にまで至ってはいないのですが、母性や包容力には全く遜色はなさそうです。

 

そして墨田と別れ下宿へと帰ってきた兵藤は、これまで墨田との性行為の処理に使用していたバスタオル(ずっと洗濯をしていないヤバい代物)と対峙します。

 

洗おうとすると、バスタオルから発せられた物凄い悪臭と汚水が兵藤を襲います…( ;´Д`)

 

男女で行うなら可愛い赤ん坊を生み出す為の神秘的な行為なのに、男同士だったから生み出されたものがこの汚物…。

福島先生ご自身も同性愛者らしいのですが、ご自身が経験されたであろう男性同士の恋愛のやるせなさがこの文章に詰まっている感じがしました。

 

すべてはわかっている。が、それでも何かを信じようとしている自分がいるのだった。(p.220)

 

完。

 

切ないです。

その後を妄想したいです。

やはり離れ難かった二人が再会し、同棲したり、再び旅行にも行くという楽しい妄想をしたいです。

しかし、妄想すると逆に何故かものすごく虚しくなります。

兵藤が最後の旅行の最中に考えていたことが、本当にリアルなんですよ。

 

二人で、こんな旅をすることは二度とあるまい、と兵藤は漠然と思う。たとえ将来、兵藤がこんな機会を強引につくったとしても、その時の墨田は今の墨田ではあるまい。就職すれば、墨田はみるみる社会人として成長し、逞しい青年となり、現在の「真空」は、純度を変えているだろう。(p.211)

 

本当にそうです。現実は本当にそうなんです。

墨田は就職予定なので間もなく学生から社会人になるという大きな変化が待っています。

年を取れば容貌も変化しますし、この時代なら結婚の話も割と早めに出てきて家庭環境も否応なしに変わる人がとても多かったことでしょう。

「少年」の川端×清野がずっと交流を続けられなかったのも、二人共に変化があったからだと思っています。

 

一応ラスト後に「何かを信じようとしている」兵藤が、またアパートを飛び出して墨田の元に向かうような余地が残されているような気はします。

そして再会し、また付き合いを再会するというその後の想像は割と容易くできるかもしれません。

二人は両思いのまま別れているので、どちらかが望めばそうなりそうです。

しかし、再会した彼らを待ち受けているのはおとぎ話やハッピーエンドの恋愛もの(BL含む)のような「二人が仲良くその後も変わらない日常を過ごす」穏やかな世界ではなく、今よりもLGBTQに遥かに厳しかった時代のシビアな現実です。そして墨田は今居る九州では無く本州で就職する予定なので、このシビアな現実に遠距離恋愛という要素が加わり、更には先程書いたようなお互いの変化までもが加わります。

なんか…もう…これ以上彼らにツラい思いをさせたくないよ…「少年」ルートで良いよ…って気持ちになるくらい、その後を妄想する方がツラいのは私だけでしょうか…( ;∀;)

 

思い出は思い出のまま、美しく。

 

「少年」はそんな作品だと思うんですが、「バスタオル」もそういう物語として読んだ方が私には良さそうです。

 

お互いが生きていて想い合っていて所在も分かっているのに再会出来ないって、死に別れとはまた別の切なさがありますね…😭

 

あー、切ない…😭

しかし、これもこれで有りですし、好きです。

 

興味がある方は是非読んでみて下さい。

 

 

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