うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

堀辰雄「燃ゆる頬」②

堀辰雄先生「燃ゆる頬」については一度簡単に語りましたが、衝撃の事実が発覚しましたので追加で書きます。

堀辰雄「燃ゆる頬」 - うみなりブログ。

 

「燃ゆる頬」本編は青空文庫で無料で読めますので、未読の方は是非ご覧になってからこちらの記事をご覧下さい。短いのですぐ読めます。

www.aozora.gr.jp

 

以下、BL・同性愛の話題です。お気をつけ下さい。

 

 

衝撃の事実って何だい?!早よ教えろや!!と乗せられて下さった方、ありがとうございます。

とりあえず、何も言わずに『文藝春秋昭和7年1月号に掲載されたバージョンの「燃ゆる頬」の一部をご覧下さい。

 

そんな事があつてから、私と三枝との友情はいつしかその限界を超え出した。

ーー私は、私と彼との場合には、彼の方が女であるのを認めた。が、それと同時に私の知つて驚いたことは、彼が魚住に対しては男の役割に廻つてゐるらしいことだつた。しかし彼は私を知つてから、その男の役割を嫌ひ出してゐるやうに見えた。それよりも私には、あの魚住が何時も女であるのを発見したことは意外だつた。私は、彼がいつか植物実験室の中でちらりと私に見せた、あのコケテイツシユな女らしい様子を思い出さずには居られなかつた。そして私は、性《セツクス》と云ふものがどうやら私の想像もして見なかつたやうな、思ひがけない仮面をつけてゐるものであることに気づきだした……

 魚住はすぐ、外国の町で自分の同国人を認めるやうな一種の直感でもつて、私と三枝との関係を見抜いたらしかつた。私は彼に何時ひどい目に会はされるかも知れないと思つて、絶えず彼を恐れてゐた。しかしどんな遊戯にでも加つてゐる以上は、その遊戯の規則を勝手に変更することは出来ないのだ。そんな理由からか、私は間もなく、魚住が私に対しても、三枝に対すると同じやうに、女の役割に満足してゐることを認めた。

 しかし、私は三枝が私に近づいてくるにつれ、魚住がだんだん他の寄宿生に対して荒つぽくなり、時々グラウンドに出て一人で狂人のやうに円盤投げをしてゐるのを見かけた。

 

( ゚д゚)

 

魚住…お前…受けだったの…?

 

( ゚д゚)

 

ちょっと待って…⁈

私めっちゃ攻めだと思ってましたよ⁈

こいつが攻めじゃなければ誰が攻めなんだ、くらいの勢いで攻め認定してましたよ⁈

背の高いジャイアンみたいなやつが三枝を毒牙に掛けて、更には主人公まで狙っているという、いかがわしい学園BLドラマを頭に思い浮かべながら読んでいましたよ⁈

 

受けだったんかい!魚住!!紛らわしいわ!!!

( ゚Д゚)ノ====┻┻゚ロ゚)(←魚住)

 

つーか、この状態だと、三枝×魚住の関係が色々おかし過ぎるように感じるんですが…!

 

その魚住と云ふ上級生は、私の倍もあるやうな大男で、円盤投げの選手をしてゐた。

私は彼に何時ひどい目に会はされるかも知れないと思つて、絶えず彼を恐れてゐた。

 

なので、魚住が校内で皆から認知されている性格も体格も、基本的には「ジャイアンみたいな奴」という認識で間違ってはいないと思うのですよ。

 

で、三枝は

彼が上級生たちから少年視されてゐたことはかなり有名だつた。彼は痩せた、静脈の透いて見えるやうな美しい皮膚の

か弱いか細い少年。

私は勝手に萩尾望都先生の「トーマの心臓」のトーマみたいな子をイメージしながら読んでいます。

萩尾望都トーマの心臓」(小学館文庫、1995年)p.438より



え…?トーマがジャイアンを攻めるの…?

 

ジャイアンが自分を攻めるようにトーマを脅迫し、嫌々ながらもトーマは攻めていたということになるんですか…?

 

そして、主人公×三枝であり、且つ魚住は主人公×魚住の関係を狙っていたということも明言されていますので、この世界での攻めカーストのトップには主人公が君臨していたということになるのですか…?

 

(宇宙猫の画像)

 

どういうことだってばよ…!

 

もう私の頭の中の「燃ゆる頬」の世界がぐっちゃぐちゃになりました。

 

どうしてくれるんだ…!魚住…!!(※魚住のせいではない。)

 

読んだ人類の混乱を防止する為に堀辰雄先生はこちらの箇所を削除したのでしょうか…?

だとしたら、おかげで三枝の儚いイメージが際立っていますのでナイス削除だと思います。

万が一削除されていなかったら体だけムキムキのトーマが読了まで脳内再生され続けそうですし、ここまで名作として残り続けなかったかもしれません。

 

こちらの情報はTwitterでお世話になっている河上様から教えていただきました🙇‍♀️(河上様、本当にありがとうございました🙇‍♀️!!)

こちら↓の大森郁之助先生「堀辰雄「燃ゆる頬」雑考ーー《VITA SEXUALIS》としてのニ、三の問題ーー」

https://sapporo-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4631&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

の中に

初刊本(昭和8年12月四季社刊『麦藁帽子』)以降削除される次のような一節がある

として先程の文章が紹介されていましたので、一応初出である『文藝春秋昭和7年1月号に掲載された「燃ゆる頬」全文の複写を取り寄せて確認しました。

文藝春秋昭和7年1月号(第10巻1号)より



完全に削除されたのは先程引用した部分のみでしたが、微妙に異なっている箇所がちらほらありましたので、気になった箇所をまた次回ご紹介したいと思います。

 

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