うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

小島信夫「ガリレオの胸像」①

ある日、城山の授業のときだ。例によって島中の背中に鉛筆で文字を書いていた。島中はくすぐったそうにしながら、甘んじて庄一郎のするに任せていた。 庄一郎はただのいたずらや城山に対する反抗などではなくて、島中の背中にそうして文字を書いていると、つよい満足をおぼえるからだ。
「僕は君が好きだ」
と庄一郎は書いていた。

 

好きな人の背中に字を書いて。

必要なものを隠して困らせて。

カンニングさせてーー。

やがて「行きつく所まで行ってしま」う二人。思春期の思慕が大爆発。そして、戦後の二人は…?

小島信夫先生の短編小説「ガリレオの胸像」の紹介です。

BL・同性愛についての話題です。以下お気をつけ下さい。

 

 

簡単にまとめると、同級生が好きでだんだん行動がエスカレートしていく主人公とその相手を、戦前と戦後に渡って描いています。

ゲートルとか巻いている戦前の旧制中学が舞台です。

 

 

「釣堀池」(作品社、1980年)、「小島信夫短篇集成第4巻」(水声社、2015年)に収録されています。

 

もう、思春期大爆発な感じで、なかなかに良かったです。

以下ネタバレのオンパレードで参りますので、気になる方は先に作品を読んでから感想をご覧下さい。

 

とりあえず、主人公の大友庄一郎くんは同じクラスの島中くんのことが好きで好きで堪りません。

 

 

この優しい男をなぜ自分はこんなに好きで好きでたまらないのだろう、と庄一郎は深呼吸をしている島中の身体をながめていた。

 

とりあえず島中のスペックが書かれている部分を引用↓

 

庄一郎は一、二年前から、クラスの生徒の男たちが美しく見えだしてきたが、とりわけ今年から前の席にいる島中のことを、あけてもくれても考えるようになっていた。島中は庄一郎より二つ年上で、その都市から電車で二十分ばかり入ったところの小さい町の呉服屋の息子であった。彼が凹んだ眼をしていること、色の白いこと、黒いカタイ毛が巻いていて、首すじのあたりにもつれているのが、庄一郎の眼の前にいつも見えた。首すじの凹みには時には垢がたまっていることや、運動選手である島中が運動をして家へ帰ったままフロへも入らずに、そのままあくる日に学校へ出てくるせいか、汗くさい臭いがすることがあった。

 

垢がたまっているとか汗くさい臭いがするとかマイナス要素が書かれているにも関わらず、とりあえずめちゃくちゃ島中が好きなので、島中と一緒に寝たいとか思っています…(*´-`)

一緒に寝て何をどうするかとかは分からないけど、とりあえず一緒に寝たいそうです…(*´-`)

ウフフ…(*´-`)

 

そして、好き過ぎるが故に、色々やります。

全50ページくらいの短編で学生時代編はそのうちの2/3くらいなのに、このような一覧↓にしないと上手く纏まらないくらい、色々やらかします。

 

★庄一郎が島中に対してやったこと〜初級編〜★

待ち伏せ

登校する時に島中のファンの女学生と共に待ち伏せして後をつけ、女学生が居なくなった途中から一緒に登校します。

・勉強を教える

年上だけど勉強は苦手な島中に教えます。この一覧の中では一番まともです。島中は他の人からも教えて貰っていたため、その点は不満な模様。

・手紙を書く

熱烈なラブレターを書きます。読んでもらえて字が綺麗だと褒めて貰えたものの、内容には触れられずにションボリ。

・ゲートルを隠す

島中の困った顔が見たくなり、登下校に必須のゲートルを隠します。これは色々アウトだ…。

・背中に字を書く

前後の席だから出来た所業。「皆に見つかったら噂になっちゃう…いや寧ろ噂になりたい!」とか思いながら結構しょっちゅうやっていた為、先生に見つかり大目玉を喰らいます。

 

 

庄一郎は「自分が(※自分だけが)島中に何かしてあげたい」という気持ちを異様に強く持っており、究極的には島中の為なら死んでも良いと考えています。

また、島中の凛々しい姿だけではなく、情けない姿もこよなく愛しているのです。だからゲートルを隠したりするのです…良い子の皆はこういうことは真似しちゃダメ、絶対!

そのせいか、ところどころで島中に対して女性っぽさを感じられるような描写がなされています。

ただ、現時点では庄一郎よりも島中の方が背が高く男らしいです。あと、庄一郎は島中からも女学生からも「可愛らしい」と思われているらしい…(*´-`)

 

島中はラブレターを読んでいるので庄一郎の気持ちには気づいていますが、はっきりとは答えません。

島中は庄一郎のことを一体どう思ってるの⁈と、庄一郎と一緒にヤキモキしてしまいますね。

 

そんなある日、島中が他の生徒と一緒に仲良く教官の家に遊びに行っているところを発見し、庄一郎は嫉妬します。

翌日島中に対し絶交だと怒る庄一郎。そんなこと言われても…とムッとなりつつも、庄一郎に「おこった?」と聞く島中がちょっと可愛い(*´-`)

そして庄一郎が「カンニングさせたい」と答えるとそれを聞き入れます。

お…?ちょっとほだされて来たか…?

 

その後すぐマラソン大会があり、一位になるかもと期待されながら参加した島中は去年と同じ順位だった為、自瀆行為したからではないかと先生に勘繰られ部室で不貞腐れます。そんなこと競技の前にするかと憤る島中。

さて、腐女子必見のシーンがやって参りましたので、ここからは引用多めでお送りいたします。

 

「島中、君はそういうことするのか」

「君だってやるだろう。僕はあまりしないよ。しなくても夢精はするがね」

「したことはあるのだね」

「それはあるさ」

「そうか」

「何だね」

「そんなら、僕にやらせないか」

庄一郎は小さい声で恥かしそうにいった。

 

お…😳

 

「君がそんなにしたけりゃ、させてもいいが、ここは部室だから、見つかるとこまるぞ」

「君はそういうこともやったことあるのか」

「あるよ」

「あるって、相手は誰なの」

「相手、いくらもいるよ、部の先輩もおるし、××もそうだよ」

 

 

∑(゚Д゚)

島中…!お前って奴は…!!

庄一郎からのアプローチを華麗にスルーし続けておいて、裏ではそんなことしておったのか…!!!

 

庄一郎はしばらく考えていて、そんないまわしいことは止そうと思った。
「やっぱり、止す。 みんながしたのならよす」
するとやにわに島中は、
「僕も君にしてあげたいんだよ」
庄一郎はとっさに立ちあがった。
「ごめんよ、島中」
「いいよ、心配しなくても、 さあ」
島中は庄一郎の脚をひっぱって倒した。
「僕だって、して貰いたいし、したいんだよ」
「君は三位だったものだから、ヤケクソになっているんだ」
「ヤケクソ? そんなことあるもんか。 僕は君のいう通りカンニングされてあげるよ。 君のいう通りしてあげるよ」
庄一郎を抑える島中の力は想像していたよりずっと強くてにげることが出来なかった。

 

お、お、お!!

立場が逆転し、今度は島中が庄一郎に食い下がります。

ここの庄一郎の引き具合がリアルでとても良い。庄一郎が島中にずっと求めていたこと(=一緒に寝ること)はやはりこれ関連のことだったんじゃないのかと思うのですが、皆としていると知った途端にずっと望んでいたことが「いまわしいこと」になってしまうのが、もう…(*´-`)

思春期の潔癖とか独占欲とか嫉妬とか色々なものがごた混ぜになっている具合が最&高。

その後しばらく二人の押し問答(?)が続きます。

 

「きみは、いくつまで生きたいと思うか」
「きみは?」
と島中は問い返した。
「きみと暮せるうちだけ生きていて、あとは死んでしまいたい」
「僕は、やっぱり分らないな」
「この世で美しいのは、今の僕の気持だけだ。 これがなくなったら、灰色になってしまう。 灰色の世界だ。 そんな世界に生きて何になる」
「君はロマンチックで、いいな。そういうところが、僕の好きなところだ。君は将来何になる」

 

ここ!

もう…若いってイイネ!(このブログ開始してから何度目だ自分…とりあえず折口信夫「口ぶえ」福永武彦「かにかくに」では間違いなく言っている…)

私は今回この「ガリレオの胸像」を読みながら、時代背景などからも小川国夫先生の「東海のほとり」と似た空気をずっと感じていましたが、「東海のほとり」の好きなフレーズ

あの時木暮は私の実際と想いで感じうる美しいものの全てだった。

(小川国夫「東海のほとり」(講談社文芸文庫アポロンの島」収録)より

にも通じる感覚が更に⭕️。

 

あと、さりげに島中が「そういうところが、僕の好きなところだ。」と告白しているのも見逃せないです。

 

 

「もうそんな話よそう」
島中はまた力を入れて庄一郎をだきよせた。
「ゲートルをとれよ」
「うん」
「まったく、ひどいゲートルにしやがったな。 あの白いのはよかったのにな」

 

きたーーー!(゚∀゚)だきよせたーーー!(゚∀゚)そして、ゲートルを取り始めましたーーー!(゚∀゚)

けどここで場面が変わってますーーー!!😭

 

 

★庄一郎が島中に対してやったこと〜中級編〜★

・???

やったのかやられたのかは分かりませんが、上記のやり取りの末に彼らは何かをやりました。

 

 

 

さて、この後いよいよ学生時代編のクライマックスですが、長くなりそうなので今回はこの辺りで。

★庄一郎が島中に対してやったこと〜上級編〜★で、庄一郎は一体何をやらかすのか⁈乞うご期待!(適当なアオリ)

 

 

 

 

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