うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

岩村蓬「鮎と蜉蝣の時」

本日は岩村蓬先生「鮎と蜉蝣の時」(学芸書林)のネタバレ有りの感想です。

Twitterで教えてもらい、最近初めて読みました。

戦前から戦中にかけての旧制中学が舞台のBLものです。

以下BL・同性愛の話題です。お気をつけ下さい。

戦前から戦中にかけての旧制中学が舞台なんですが、なんか現代の男子校と言われても違和感がなさそうな雰囲気です。

昭和の終わり頃に発行されているので、文章も今風です。(私は最近戦前の文学ばかり読んでいるのであくまでそれに比べたらですが。)

超切ない!尊い!匂わせとかではなくて、思いっきりBLというか同性愛です。主人公と意中の先輩がアレな行為にも及んでいます。戦前生まれで学徒出陣にも動員された男性が書いた作品なんですが、もしかしたら現代のBL小説の中に混じっていてもあんまり違和感がないんじゃ、とかちょっと思いました(私は現代のBL小説を全然読んでないのであくまで想像です)。

以下ネタバレありのあらすじです。

主人公は伊賀麻男という美少年。東京の郊外にある旧制中学の学生。勧誘されて陸上部に入り、最上俊彦という先輩からマンツーマン指導を受けています。

最上は美少年の伊賀を意識しており、指導にも熱が入り、何かと世話を焼きます。最上は一人っ子の伊賀に「俺の弟になれ」と言い、伊賀も最上を兄のように慕います。

そのうちに陸上部内で「伊賀は最上の稚児だ」というような噂が流れ、最上が伊賀を避けるようになります。伊賀が話しかけてもそっけない対応をする最上。

前と同じような関係に戻りたい伊賀は悩みますが、やがて最上は指導と称して校外に伊賀を連れ出して二人きりの時間を作るようになり、二人はますます親密な関係になります。

陸上の大会もあり伊賀は学業そっちのけで陸上に情熱を注ぎますが、ある時に風邪をこじらせて肺炎になり生死の境をさまようほど病状が悪化しますが、何とか持ち直します。学校にもしばらく行けなかった間に、最上は卒業、翌日には進学先の金沢に旅立つという日に、伊賀を見舞いにやって来ました。

近況などを話した後、急に最上は伊賀に激しく口付けをし二人は初めて身体を重ねますが、なんとなく気まずいまま別れることとなります。

その後、伊賀は肺結核の初期だと診断され、陸上も出来ず学問にも身が入らない宙ぶらりんな状態で過ごします。最上からも手紙はほとんどありません。

自暴自棄にもなりましたが、肺結核はその後誤診だと分かり、陸上部にも復帰して気を取り直して生活を送り始めたある時、帰省した最上に会えることとなり伊賀は喜んで最上の家に行きますが、そこで最上から金沢に婚約者がいることを告白されます。ものすごくショックを受けますが、男らしく身を引こうと決心する伊賀。

その後最上は戦争に召集され、伊賀も外地へと進学が決まり、時が流れます。

戦後何とか日本へ帰ることが出来た伊賀は、陸上部の先輩の島から、最上が特攻で戦死したこと、本当は婚約者など居なかったことを告げられます。そして島と一緒に最上の実家へ行きますが、そこでかつて婚約者だと告げられた写真の女性・最上の姉から、最上は伊賀の一生の心の重荷と進路の妨げになるような罪を犯してしまったと深く後悔していた、その罪を更に重ねないように咄嗟に嘘をついてしまった、もし金沢まで伊賀が来ることがあったら真実を告げて詫びるつもりだから私にも立ち会って欲しいと言っていたことを聞かされました。

最上の真意と思いやりを知り、伊賀の心の澱が全て消えました。

そして腹を切るような表情(伊賀なりの殉死の儀式)で最上の仏前に座り、もう一度立ち直ることを誓うのでした。

 

あらすじが上手に書けませんでしたので、ちょっとでも気になった方は是非小説を読んでみて下さい。ものすごく心に響く良い話です。

絶版みたいなので購入するのは難しいかもしれませんが、私は図書館で借りて読むことが出来ました。

とりあえず最上と伊賀の関係が尊いのですが、伊賀と喧嘩をする同級生の早野や、伊賀を慕う後輩の粕谷との関係性も割と好きです。

最上と伊賀の関係性も、最初は最上の片想いみたいな感じで伊賀は全く気づかないのですが、そのうちに伊賀にとって最上も特別な存在へと変わって行って…という少しずつ変化する心理描写がとても丁寧に書かれていたように感じました。後半、最上が婚約者がいると嘘を付いた後や最上の戦死を知ってからのシーンも心に迫るものがあります。

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↑最初の辺り、まだ最上に惚れる前のシーン。キスされそうな展開なのに、伊賀君は全く気付いてません。そしてこの時は結局キスしませんでした。こういうのも何かすっごく良いですね(*´Д`*)

気になる方もいらっしゃると思うR指定的なアレなシーンはですね、あんまりいやらしくはなくて短かったです。とりあえずすっごくヒヤヒヤしました。どうヒヤヒヤするかは読んでのお楽しみにしておきます。

はぁ〜、戦後の文学も良いですね!

私は別に戦前の純文学にこだわっている訳ではなく古今東西良さそうなものがあったら読んでみたいと思っていますので、何かオススメ!というものがありましたら是非是非教えて下さい(*´꒳`*)

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