メリークリスマス!
皆様よいクリスマスをお過ごしでしょうか?
🎄🎁🎅🎂🍗
当ブログはクリスマス全く関係なく平常運転です。↑一応クリスマスっぽいものを貼っておきますが、クリスマス気分をぶち壊されたくない方は明日以降ご覧いただくことを推奨いたします。
さて、今回は川端康成先生の親友・石濱金作先生の短編小説「豚と緬羊」の感想です。
BL要素はありませんでしたが、面白い変態小説で印象に残りましたので、感想を書いておこうと思います。
…よりによって、クリスマスなのに変態小説なんですよ…。情緒もへったくれもありません。
あ、せっかくなので、クリスマスネタを一つ、清野少年は川端先生からクリスマスに「小さい西洋人の可愛い子供の絵のカアド」貰ってめっちゃ喜んでいたみたいです。大正時代にもクリスマスにカードを送ったりしていたんですね。
さて、以下BL要素はありませんが、内容が変態ですので、お気をつけ下さい。
私が石濱先生の作品を読み始めたのは、川端先生に求婚された相手(あえて誤解を招く書き方)がどんな人なのかという興味本位からだったのですが、入手できる範囲内で色々読んでみましたら、割と純粋に彼個人のファンになりました。
白樺派の里見弴先生も現在では忘れられた作家扱いになってしまっているようですが、石濱先生はその里見先生以上に忘れ去られてしまった作家だと思います。
川端先生が知名度が高すぎて、その親友というポジションであったから名前だけは知られているけれど作品は読んだことがないという方が大多数ではないでしょうか。
第六次「新思潮」の創刊号では川端先生と並ぶくらい評価された実力の持ち主らしいですし、大正10年台から昭和10年台まで10年以上活躍していたみたいですので、決して短命には終わっていない作家であると思います。
しかし、いくつか読んだ作品はあまり「これ!」という印象には残りづらい感じで、パッとはしませんでした。
川端先生の「伊豆の踊り子」みたいなヒット作が生み出せなかったから、純文学から推理小説などの大衆小説に移行して行ったのかな、と勝手に推察しています。
個人的には彼の文章はものすごく読みやすくて面白いです。「!」が多用されているなど、勢いもあります。
ちょっと忘れ去られてしまうには惜しいように感じます。
著作リストすら入手できていない為、私もあまり沢山は読んでいないのですが今後も少しずつ読んで当ブログで大プッシュしていこうと画策しています。という訳でカテゴリーに「石濱金作」を作りました。
もーWikipediaすらまともに書かれてないですからね…。淋しい限りです。
さて、「豚と緬羊」の感想です。
満州では豚が汚物処理をしたついでに女の尻を舐めているという嘘話を幼い頃に聞き性癖を拗らせた主人公が、動物園で若い女が緬羊に紙を食べさせているのを見て自分も女の使用後の紙が欲しくなり、ついには公園の羊の形をしているゴミ箱の中に入って女の捨てた紙を得て喜ぶという短編小説です。
とりあえず主人公は元から女性に幻想を抱きまくっていたのですが、満州では豚に汚物処理をさせていて排泄したあとの尻まで舐めさせているという嘘話を聞き、そんな光景が日常的に眺められる満州に憧れすら抱くというなかなかパンチの効いた性の目覚めを経験しています。
そして大人になり、女が使用したちり紙が欲しくて欲しくて仕方なくて、とうとうゴミ箱に大真面目に入ります。
日比谷公園の木陰の闇みに白く立っている一箇の紙屑箱ーーそれがこの私なのだ。
「それがこの私なのだ。」じゃないよ!
なんか冷静に文学的に状況を語っているけど、大の男が変なゴミ箱に縮こまって入っているだけですからね⁈
どういう状況だよ!急に真面目にゴミ箱に入り始めるから面食らったよ!というツッコミが捗ります。
↑羊の口のところにゴミを入れるようなゴミ箱らしいです。主人公はその口から外界を覗きます。
そして主人公は女の捨てた紙なら何でも良い訳ではなく、鼻をかんだりするなどして使用した後のものが欲しいのです。
女の鼻汁をかんだ紙!その他、とにかく女が不浄に用いた紙!
かなり拗らせていることがお分かりいただけるのではないかと思います。
石濱先生の作品は「!」が多くて勢いがあって良いと上に書きましたが、ここでもその勢いが遺憾無く発揮されています。
そして、なんか妙に生き生きとしています。主人公=石濱先生だったらどうしよう…。
まず、公園には普通に置いてあるみたいに書かれている羊の顔をしたゴミ箱ですが、実際にそんなの見たことありません。昭和初期にはオーソドックスだったのでしょうか。
そんなゴミ箱が公園に設置されている図も想像すると相当にシュールですし、男はそこら辺にゴミを捨てるけど、女はちゃんとゴミ箱に捨てるという、ストーリー上都合の良い展開と解釈が為されています。
いや、男性でもちゃんとゴミ箱に捨てる人は捨てるよ⁈万が一男が捨てたゴミしか得られなかったらどうすんだ!詰めが甘いよ!というツッコミはこの主人公には届きそうにありません。
ゴミ箱に大真面目に入った後、カップルがキスするのを冷静に観察したりして"覗き"という別の変態ポイントも稼ぎつつ、そのカップルの女が捨てた使用後の紙を入手して念願を達成し、この話は終わります。
私はもう、満洲の豚を羨む必要もない。また私は、あの醜い緬羊になりたいなどと考える必要もない。
いや、すごいよ…。
想像の斜め上を行く変態だったよ…。
つーかこんな拗らせた変態が、念願の使用後の紙をたかだか一枚入手しただけで満足できるんでしょうか?この主人公なら大真面目にまたやりそうな気がしますよ。
「給仕の室」も変態小説だと思いますが、それとは変態のベクトルが違いました。
変態小説の世界、奥が深いですね。
そして純文学を書いて、推理小説を書いて、変態小説も書ける石濱先生、多才だと思います。
興味がありましたら、是非読んでみて下さい。
「竹中英太郎(三) エロ・グロ・ナンセンス (挿絵叢書)」(皓星社)に収録されています。
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