憎いあんちくしょう、奴の名は削字。
室生犀星先生の「稚児と妹」の感想の続きです。
未読の方はこちらからご覧下さい。↓
BL・同性愛の話題あります。以下お気をつけ下さい。
「稚児と妹」の話をする前に、これだけ言わせて下さい!
川端康成先生の「少年」が今年の3月28日に新潮文庫で発売されるそうですヽ(´▽`)/✨
やったーー!
もう川端全集10巻を重い思いをして読まなくて良いのね⁈
全国の「少年」ファンの皆様(※どれくらい居るかは分かりませんが、とりあえず最低でも5人居ることは把握しています)、楽しみに待ちましょう!
さて、「稚児と妹」の続きです。
主人公と幼なじみの美少年・竹村。
皆から稚児扱いされている彼は外では大人しくしていましたが、家では妹を手酷くいじめていました。
妹は泣きながらも竹村に言い返したり反撃したりもしますが、1時間も経てばケロリと忘れて竹村に懐いている、そんな娘です。
主人公はそんな二人の関係を不思議に思いながらも、二人に惹かれているのでした。
というところまで前回紹介しました。
そして場面は変わり、夏のある日。主人公が2〜3人の友人と河原で遊んでいると、乱暴者で有名な国本という上級生に、もっと下流の方で遊ぼうと誘われ、友人達と共に国本とキリギリスを取って遊ぶことになります。
国本は沢山取ったキリギリスを主人公にも分けてくれて、自分の家に来ないかと誘います。国本の家に一人で遊びに行く主人公。
もうBL漫画なら絶対に何かが起こらないとおかしい展開!ドキドキしながら先を読みます。
とりあえず主人公は国本から「君に稚児は居るか?いなければ分けてやろうか?」などと言われます。
あらすじの途中ですが、この作品の目立った特徴としましては、とりあえず①でも書きましたように検閲によってセリフなどがかなり削られている点です。
国本の家でのシーンのやり取りもことごとく削られています。
「君に稚児さんがあるのか。なければ一人わけてやらうか。」
といつて、かれは横にねそべつてゐた。
(20字以上削字)温和しくていゝぜ。」
私はFを知つてゐた。弱々しいいじけたやうな少年だつたので、
「あれは肺病みたいでいやだな。もつと可愛らしいのがいゝ。」
(5行削字)
「うん。いくつだらう。」
こんな具合なんですよーー。゚(゚´Д`゚)゚。
私の気持ちが少し分かっていただけましたでしょうか…orz
ぐぎぎ…裏から透かして何とか見えねぇかなぁ…などとエロい漫画のエロい部分を何とかして見ようとする男子高校生のようなことを考えましたが、元から消されているので無駄です。
この部分で何が行われてor話されているのか、妄想を働かせるしかないです。
この○○年妄想の限りを尽くしてきた私にとっては特技は妄想だと言っても過言ではありませんが、この世界の何処かには削られていないバージョンがあるのではないかと思うと、途轍もなく不毛な気持ちになります…( ;∀;)いや、本当に無いかもしれないんですけどね…。
とりあえず、削られていない部分をつなぎ合わせて妄想力によってカバーしますと、こんな流れになります。
①国本に、稚児をわけようかと言われる。
②悪い気はしない主人公、ちょっとその気になるが、国本がこんなことを言い出すのは少しおかしく思い、悪い予感がする。
③案の定、国本から自分の稚児にならないかと言われる。(※妄想によるカバーです。本当は何と言っているのか分かりません。)
④主人公、びっくりして断る。自分にも稚児さんになるような素養があるのかと少しだけ嬉しくなるが、同時に辱められている気持ちになる。
⑤食い下がる国本。主人公に近寄りしげしげと見つめる。気味悪がる主人公。
⑥竹村が上級生に言い寄られていた時の姿を思い出し、竹村はこんな気持ちだったのかと思いを馳せる。
⑦更に食い下がる国本に、はっきり断る主人公。国本の家を慌てて出る。
これで国本のターンは終了です。
国本とは言葉のやり取りだけで、特にそれ以上のことは起こらないのですが、この場面での主人公の心の動きがとても良いです。
稚児になれと言われて、怒りや恥ずかしさや不快感を感じているのですが、「軽い喜ばしさ」と「説明しがたい、いくらか甘いやうな変に宙にあるやうなあやふやな気」を同時に感じたりもしているんですね。
まさにBL漫画の受けの子がモブ男に迫られて感じている気分ですね!
国本の家を出た主人公は、竹村の家に向かいます。
竹村の家では、竹村が妹の上に馬乗りになって、後ろ手に腕を縛り付けている最中でした。
だ か ら、一 体 何 の プ レ イ な の ∑(゚Д゚)⁉︎
何やら今日は妹が母に何か悪口を言ったことを疑っている模様です。
「君、よしたまへな。乱暴な。」などと止めながらも竹村が芝居の悪漢のようで可笑しく感じたり、着物の隙間からチラチラ覗く妹の膝が気になって仕方ない主人公。イイネ!
妹は「何も言っていないし、次からは何も言わないから解いて!そろそろ夕飯に誰か呼びに来るから、見つかったら叱られるのは兄さんの方だ。」と言い、竹村も誰か来ないか段々不安になります。
「こんな風に縛っているのを見つかったら大変なことになる。」と妹に加勢する主人公。
竹村は妹にもう何も言いふらさないことを約束させて縄を解きますが、それは妹の策略で、解かれた妹は「母様に言い付けてやる!」と走り去りました。
竹村は先程の元気が無くなり、すっかり沈んでしまいました。
完
何だか中途半端ですが、ここで終わっています。
もう少しだけ最後に主人公と竹村のやり取りが欲しかったような気もしますが、妹に酷いことをしている時とのテンションの違いがしっかり現れていて、妙な静けさを感じさせるラストとなっています。
竹村はラストで何度も不安気な目を主人公に向けていたりして、①でも書きましたが、やっぱり主人公に自分の暴走を止めて貰いたいのではないか?と思いました。
外で皆から稚児さん扱いされているストレスを妹で発散しているような面もあるのかなぁ…(´・ω・`)
主人公はこれからどうするのか?ここからは今度こそ完全に妄想するしかありませんが、竹村の力になってやって欲しいところです。
そして、めくるめく主人公×竹村な展開を存分に繰り広げてもらいたいものですな…。
室生犀星記念館様のツイートで知り「稚児と妹」というド直球なタイトルが気になって取り寄せてみましたが、なかなか内容も興味深く、セリフを始めとしてすごくレトロな気分を味わえました。
個人的にはかなり好きな雰囲気です。
外では大人しい美少年が、家で主人公と妹にだけ見せる全く別の顔。
この設定だけでも、かなり美味しいですよね!
そして、もうセリフの言い回しがね、いちいち昔情緒溢れていて本当に最高なんですよ…。
〈一例〉
・覚へてゐたまへ。
・ちつとも怖くなくてよ。
・君は本気でいふのかい。冗談なら止したまへ。
・君、よしたまへな。乱暴な。
基本的にバカ丁寧なセリフ群の中に、たまに「畜生」とか「あかんべえだ」とか入ってきて、これまたなんか可愛いのです。
あらすじだけではよく分からないと思いますが、登場人物の表情や仕草なども丁寧に書かれていて、ところどころ脳内で映像が浮かんでくるような感じでした。
削字が多すぎるのが本当に残念でしたが、それもまた趣きがあると言えばあるかな?と超ポジティブに言い換えてみます。
興味がある方は是非、国立国会図書館から「国粋」大正9年11月号の複写を取り寄せてみて下さい。
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