うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

里見弴「君と私と」②

里見弴(さとみ・とん)先生のBL要素ありの自伝風小説「君と私と」の感想2回目です。

1回目↓

里見弴「君と私と」①(相関図付き) - うみなりブログ。

BL・同性愛の話題が含まれますのでお気をつけ下さい。

前回は、作中で里見弴先生と志賀直哉先生がただの仲良しから、離れたくても離れられない共依存的な腐れ縁になったことをお話しました。「作中で」と書きましたが、人物が仮名になっているだけで完全に自伝です。

志賀と兄(生馬)の仲を嫉妬していたり、里見→志賀への片想い要素はあるのですが、特に大人になってからは恋愛感情とは別物の執着のような感じで、同性愛的な思慕とはまたちょっと違うもののような気がするのです。ブロマンスって言うんですかね、こういうの。

検閲に引っかからないように大分ぼやかして書いていたようなので、気づかずに読み飛ばしてしまっているかも知れませんが、直接的なBL要素はかなり薄めです。

志賀先生も里見先生も自宅に下宿してた書生や同級生や下級生とアレな関係になってたり、本当はかなり乱れた様子だったらしいんですけど、そういうのは基本的に書いてないから、良い子の腐女子のみんなはあんまり期待し過ぎて読んじゃ駄目だよ…!!

しかし、しかしですね!腐女子の皆様、まだ帰らないでください…!この行間から匂い立つBL臭には見過ごせないものがあるのです…!

「一人にならう!」

君は幾度も心にさう思ふ。

「あゝ、イヤだ\/」

私もさう思ふ。

それが、どうしても別れられないーーーーかう云ふ一種不合理な關係がいつの間にか君と私との間に、女郎蜘蛛の巢のやうに粘り强く、複雑にまつわり附いて了つた。

もう私たちはまるで平常の私たちを失つたやうになつて居た。來いと云ふ君にも行かないと云ふ私にも何んの理由もない。私たちは唯反對のことを云つて居るのだ。さうしていつまでも苛立たしい溷濁と不決斷な焦慮に、不知不識(しらずしらず)、昔の五分だめしの刑に見るやうな快さを自分の體に味ふのだ。君はとう\/私の腕を捉まえて引つ張つて行かうとする。私はまだグヅ\/云つて居る。

2人の間には特に同性愛的なことは何も無かったようなのですが、こういう場面を読むと里見→志賀だけでなく志賀→里見もありそうに感じるんですよね…。

2人で仲良く誘い合わせて遊郭に行っていたり、里見先生は年増の女中を孕ませたりして、女性関係にも色々と言及されています。里見先生は女中に迫られて童貞を奪われ、その後も嫌々ながら関係を持っていたらしいのですが、孕ませた後のくだりは割と酷い…。

「白樺」発刊当時のこととか白樺派の内輪の話題が盛り沢山なので、白樺派に興味のある人にはすごく面白いと思います。とりあえずしょっちゅう遊びや旅行に行っていて金持ち坊っちゃんリア充道楽記みたいな感じになってるので、プロレタリア文学の人とかが見たら「爆発しろ!」とか言いたくなるかもしれません。

私の大好きな日下諗先生の「給仕の室」と同じ全集(「明治文学全集 第76巻 初期白樺派文学集」(筑摩書房))に入っているので、当然高校生の時にも読んだはずなのですが、そういえば、あまりの文章の入って来なさに当時は途中で挫折したのでした。今回は最後まで読みましたがやはり文章が中々入って来ず、私は里見先生の文章と相性が悪いのかもしれないと思いました…。

ちなみに、志賀直哉先生がこの作品に反発して書いた「モデルの不服」も同じ全集に収録されていますので、この全集で読まれた方は併せて一緒に読まれると面白いかも知れません。

f:id:naruminarum:20211002134406j:image

↑割と冒頭の辺りの好きなシーンです。この辺りでは里見→志賀の関係もだいぶ微笑ましいのですが、どうしてああなった…。

あと、今までiPhoneで「ゝ」が出せなかったんですが、ネットで探してコピぺしたら良いことに漸く気付いたので、これからは「ゝ」を使いたい放題ですよ。やったぁ!!くの字「\/」もどこかに落ちていませんか…?横書きだから諦めろ…?そうですよね…。

①の相関図を直しました。

f:id:naruminarum:20211003150659j:image

http://akoyano.la.coocan.jp/satomiton.html#1905

↑こちらの年譜と睨めっこしたら、不明だった人名がほぼ特定出来ました。凄くスッキリしました。この年譜、100年以上前のことがまるでつい最近行われたことのように詳細に記載されていて、マジで凄すぎます。残っている手紙や日記でここまで詳細に分かるものなんですね…。本当に凄すぎる…。小谷野敦先生の本には川端康成先生の時にもかなりお世話になりました。

 

以降の作品を読み、続きを書きました。↓

里見弴「君と私と」③ - うみなりブログ。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村


人気ブログランキング

↑良かったらクリックお願いします。