うみなりブログ。

アラフォー腐女子が、BL要素のある文学作品をイラスト付きでゆるく紹介します。日本近現代文学が中心。BL・同性愛的な表現が苦手な方はお気をつけ下さい。

折口信夫「口ぶえ」①

今回は折口信夫先生のBL要素のある小説「口ぶえ」の感想です。

今年に入ってから発売された「少年愛文学選」(平凡社ライブラリー)にも収録されており、今回はこちらの本から本文を引用しています。

以下、小説のネタバレありな上にBL・同性愛の話題です。お気をつけ下さい。

もーこの小説、雰囲気がかなり好きです。

なんか、文章から暑い夏のけだるさや、汗ばむ感じまですごく伝わってきます。

折口先生ご自身も同性愛者だったそうで、この「口ぶえ」は自伝的な要素もあるらしいです。

あらすじとしては、漆間安良(うるま・やすら)という中々お洒落な名前の汗かきでちょっとボーっとした文学好きの中学3年生・15歳が、上級生に言い寄られたり、同級生と両想いになったりする、学園BLもののようなストーリーです。作中ではほぼ夏休みなので、学園内にはあんまり居ないんですけどね。

「性的なものへの嫌悪感と少しの興味」とか「穢れと清らかさとの間の葛藤」が描かれています。

思春期には性的なものに対する嫌悪感、多かれ少なかれあったりしますよね。アラフォーおばさんにはもう遠い昔の思い出でありますが、初めてこの小説を読んだのは丁度漆間君と同じくらいの歳だったので、その時には物凄く刺さりましたね。今読むとそういうものまで思い出して、漆間君の潔癖なところが益々眩しく感じられます。

彼の胸はこぼれそうになっていた。すべての浄らかなものと、あらゆるけがらわしいものとが、小いあたまのなかで火の渦を巻いた。

ああ穢い心を燃している間に、丹精した草花は、みな枯れてしまった。美しい脆い心も、その草花と一処に枯れてしまったのである。彼は、茶色になって萎え伏した草のうえに、まざまざと荒んで行った少年の心のあとを見た。

とかね…。もう最高です。

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↑漆間君に想いを寄せる上級生・岡沢君の初登場シーン。(※あ、学校からの帰宅時なので本当は帽子を被ってるかも。そして漆間君は本当は五分刈りなんですけど、あえて無視して描いています。坊主ないしそれに近い短髪は加賀乙彦先生の「帰らざる夏」を語る時に大量に描かなきゃならないと思うので、他の作品でもそうですが(清野少年も写真をみたらやっぱり坊主に近い短髪でした)、軍人以外の短髪設定はあえて無視しています。)

急に登場して、いきなり抱きすくめているんですけど…。

いや、絵に描いてしまう程には好きなシーンなんですけど、岡沢君、自己紹介前にちょっと攻めすぎではないでしょうか…。

しかも「他の上級生に漆間君が狙われている話を聞いたから漆間君に注意喚起をしよう」という口実を付けて話しかけているんですが、もうこのシーンからも漆間君に対する想いがバレバレ、話してる表情からもバレバレで、結局漆間君に警戒されてしまいます。ラブレターは無事渡せたのですが、返事に謎の俳句をもらって意味が分からず、聞いても教えてもらえず困惑するというおまけ付きです。岡沢君は、この後の展開で水泳の時に後ろから漆間君を抱きしめて頬にキスをするということまでやらかしてくるのですが、漆間君も「人前でこんなことしてくるの?ヤダ!ちょっと怖い!」とドギマギしながらも、生まれて初めて人から好意を寄せられたということもあり岡沢君が気になって仕方ありません。

とりあえずこの岡沢君は成熟した性的な存在として描かれ、漆間君をドキドキ、ドギマギさせます。当初は嫌悪感は感ずるけれども少し気になる存在として描かれていましたが、じきに穢らわしい存在となり、親に嘘をついたりする自分にはこういう穢らわしい人物がお似合いであると自嘲する為の存在となります。岡沢君はちょっと攻めすぎですが、悪い奴ではなさそうなんですけどね…。個人的には上級生→下級生のこの関係が割と好きです。

ちょっと長くなりそうですので、続きはまた次回書きます。

折口信夫「口ぶえ」② - うみなりブログ。

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